年末の遁走

ニッサンの元会長カルロス・ゴーン氏が、年末の浮かれた空気の隙をぬって国外脱出を果たしたことがおおいに話題になっています。

この脱出劇には、元特殊部隊のエージェントや、レバノン政府関係者(レバノン側は関わりを否定していますが、そんなはずはありません。政情不安定な国に事前通知なしの飛び込みで行くわけがありません)までが参加し、かかった費用は16億円以上と言われています。

没収された保釈金と合わせて31億円以上失ってでも日本から出たかったわけですから、よほどでしょう。

 

名声を汚した救世主

少し車に詳しい中年のひとであれば、ゴーン氏が招かれる以前のニッサンの放漫経営と、それゆえに生み出されたユニークな名車の数々、そしてゴーン氏の冷徹とも言える大リストラ(二万人以上クビキリ)が印象深いかと思います。

かつては、日本型馴れ合い経営から、海外式効率経営への変革者として名を馳せたゴーン氏ですが、それから十数年後、「被告人」として逮捕され、さらには作業服のコスプレしたり、楽器運搬ケースに隠れて密出国するなんて、誰も想像しなかったに違いありません。

 

映画化決定?

ゴーン氏はこの脱出劇にそうとうエキサイトしたらしく、自身の体験をNetflixで映画化しようと目論んでいるそうです。

並外れて能力が高く自己顕示欲が強いひとは、自分の人生をまるで映画のように(そして自分を主人公のように)ドラマチックにとらえている『劇場型』のひとが多いのですが、セレブの世界の住人であるゴーン氏にとって、『変装』したり『箱に潜伏』したりという行為は、よほどドラマチックで新鮮な、興奮する出来事だったのでしょう。

(ちなみに、私のように探偵として生きている人間にとっては、『変装』も『潜伏』も『脱出』も『逃亡』も、職業病のようなもので、日常です)

映画の内容は、ゴーン氏を限りなく美化した、見るにたえないほど偏った、出来の悪いミッション・インポッシブルみたいなものになるかもしれず、正直そこまで興味はありません。

 

「俺が俺が」の記者会見

つい先日レバノンで行われた記者会見もまた、なかなか興味深いものでした。

ゴーン氏が犯罪者であるかどうかの議論や判断はここでは行いませんが、会見の話しぶりを見るに、

「普通の取り調べだと、このひと絶対に認めなかっただろうな……」としみじみ思うほどの独善ぶりでした。

能力は飛び抜けて高く、確固たる信念とビジョンもあり、このひとだからこそニッサンの業績も建て直せたと思いますが、反面、あまりにも人間性や思考回路が外国人のそれで、日本人の感覚からは乖離しているという印象です。

二時間以上の会見でも、様々な言語で「私はぜったいに悪いことはしていない!」「私はこれだけのことを成し遂げてきた!」とひたすらひとりで喋り倒していました。

ニッサンでの不正会計その他の疑義については、清濁両方の性質があるのでしょうが、少なくとも『不正出国』は、日本における疑いようのない犯罪行為です。

なのに、そこには弁解も謝罪もいっさいなく、それどころか触れもせず、堂々と記者会見をしてしまうあたりの感覚は、日本人には(というか一般人には)ちょっと理解できない自意識といえます。

 

ゴーン氏の今後と込み入った関係図

さて個人的には、ゴーン氏はユニークな人物で、今後の動向にも目が離せないのですが、それは単に娯楽に近い野次馬根性です。

ゴーン氏本人が言う通りの『真っ白』だなんて到底思えませんが、だからといって『真っ黒』の犯罪者として扱うのも極端かと思います。経営の現場は、そんな潔癖でロマンチックな場所ではないからです。

特にこの問題は派閥争いが絡んでいるだけに余計に面倒です。

日本人と外国人。ニッサンとルノー。日本とフランス。庶民と成金。外様と譜代。そこにレバノンまで絡んだことで、ますます混乱の様相を呈しています。

特にレバノンは失敗国家と揶揄されるほど不安定な国です。そこに金をバラまいたゴーン氏は向こうで名士として扱われていますが、日本とてレバノンには金銭的な援助をしています。(2012年以降231億円とも)

レバノンも日本からの要求に強硬な態度は取れないはずで、板挟みのような状況であり、今後どういう出方をするのか読めません。

『先の見えない海外ドラマ』くらいの興味で見ているのが(当事者には気の毒ですが)、ちょうどいいでしょう。

 

レバノン

個人的には、ゴーン氏が期待したほどレバノンは居心地がよくなく、目論見通りの展開にはならず、ゴーン氏本人も先がまったく見通せていない状況なのでは、と思います。

だいたいレバノンはセレブが居て楽しい豊かな国ではありません。貧富の差も激しく、ゴーン氏を支持しているのも、現在レバノンで富裕層に居るひとびとだけです。

貧しいひとびとにとって、法外な金を払って日本の司法から逃げ出した人物に対する印象はかなり悪いはずです。ゴーン氏がイスラエルと関わりをもっている点も、相当のマイナスです。(レバノンは超がつく反イスラエル国家です)

ゴーン氏は、何があってもヘコたれず、自分でガンガン道を切り開いていく猛者だそうですが、そんな人物が、日本よりずっと不安定な場所に飛び込んでいったわけで、いったいどうなってしまうのか。

世界に舞台を移した、カルロス・ゴーンの活躍(あるいは挫折)……Netflixの映画より、よっぽどそっちのほうが楽しみです。

 

ゴーン氏から出た『探偵』というキーワード

さて、ゴーン氏がらみのニュースのほんの端に、探偵として興味深い単語が引っかかりました。

ゴーン氏が、ニッサンの雇った警備会社を、『探偵業法違反』で訴えたという話です。まさかゴーン氏関係で『探偵』なんて言葉を聞くとは思いませんでした。

本当はこっちが本題だったのですが、長くなったのでまた次回に記します。

続き → 【ゴーン氏と『探偵』】

 

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