ある日の覚せい剤検査 その2

ある日の覚せい剤検査 その1 の続きです

 

警察署へ

警察署で私を待っていたのは、「この道ウン十年」といった殺気を漂わせた強面の刑事でした。

かたわらに居た、その刑事よりは態度の柔らかい警察官が、事情を説明してくれました。

なんでも、今回の調査現場の住宅街では、ここ最近覚せい剤中毒らしき不審者の男が徘徊しており、住人からの通報が頻発していたらしいのです。

つまり、たまたま、偶然、運悪く、私はそんな場所へと張込みに行ったわけでした。

現場は、住人全員が顔見知り、という閉鎖的な住宅地で、見慣れない顔は非常に目立つ場所だったのです。それで合点がいきました。依頼人も聞いたらさぞ驚くことでしょう。

「調査中の探偵だから怪しく見られただけ」ということで、すぐに誤解も解け、開放されると期待しましたが、そうはいきませんでした。

 

刑事のひと言

その強面の刑事がこんなことを言い出したからです。

「クスリやってる探偵かもしれん」

メチャクチャです。一体どんな目で探偵を見ているのか、と脱力しました。

さっきから私を睨んでるアナタこそ、よっぽどそんな風に見えますが、と憎まれ口を叩きそうになるのをぐっとこらえました。余計に帰りが遅くなりそうだったからです。

こうして、私は覚せい剤検査をさせられる事になりました。もちろん初めての体験です。

 

覚せい剤検査開始

警察署の奥に連れて行かれ、小さな容器が入った袋を渡されました。

検尿キットみたいだな、と思いましたが考えてみれば検尿そのものだなと、一人で納得します。段々、興味の方が先立ち始めました。

「どうですか? 出そうですか」警察官が聞きます。

「そうすぐには」

私が答えると、テーブルの上に薄いお茶が大量に入ったヤカンとコップが置かれました。

検査にはベテランの警察官と、落ち着きのない若い警察官が立ち会いました。

まず容器を手にとって見えやすいポーズで持つよう言われました。

ベテラン警官が隣の若い警官に指示を出します。若い警官は、おぼつかない手つきでデジタル一眼レフカメラを構えました。レンズにキャップがついたままです。

「おい、キャップ!」と案の定ベテランが注意しました。

「あ」と若い警官が慌ててキャップを外しました。そのまま、容器を掲げた私を写真にパチリ。

「ああ、新人研修ですか」という私の軽口は無視されました。

デジタルカメラで撮影したあと、今度はフィルムカメラでもう一度、まったく同じ写真を撮りました。

「はい、じゃあ袋を開けて、そこで一回止めて下さい」

ベテランが言います。私は言われた通り、袋を開けた状態でピタリと止まりました。

また若い警官がデジカメとフィルムカメラで写真を撮ります。

「はい、じゃあ容器を袋から取り出したところでまた止めて下さい」

言われた通りにしました。また若い警官がさっきの手順を繰り返します。

袋を持つ、開ける、中から容器を取り出す、容器のキャップを外す……それぞれ動作ごとに区切って、連続して写真を撮るようです。しかも、デジカメとフィルムとで二枚ずつでした。

なるほど、と私は納得しました。

動作ごとに区切って写真を撮るのは、覚せい剤検査で陽性が出た人間が、「途中で警察に混入された!」と言い出すのを反証する為でしょう。

デジカメだと、「写真をデジタル加工した!」と言われる余地が残るからで、その為にわざわざアナログなフィルムカメラも併用しているわけです。

この私も、探偵として「立証」を仕事としている身だけに、妙なシンパシーを感じました。オマワリさんも大変だな、としみじみ思いました。

 

そして採取

手際の悪い若い警官は、いちいちベテランから作業を注意されています。

カメラの扱いを注意される若い警官を見ていると、新人探偵とベテラン探偵とのやり取りを見ているようで、なんとなくほのぼのした気持ちになりました。

「はい、じゃあ採取して」

警官に言われ、私はプラコップを手に持ってトイレへ向かいました。二人の警官もついてきます。

え、まさか…。ここから先も全部撮影? と私は戸惑いました。

考えてみれば、適正な採取・検査の為の証拠として写真を残すのなら、「総て」をカメラにおさめるのは当然でしょう。

さいわい、撮影は後ろ姿だけでした。こんな目にあって「さいわい」も何もあったものじゃありませんが。

強面の刑事はいつのまにかどこかに消えていました。

それから、ベテランの警官が書類にサインするよう指示してきました。「採取した自分の尿の権利を一切放棄し、警察に委譲する」といった内容です。

形式張った書類と採取したモノとのギャップがおかしかったですが、さすがに警察のやることに隙はありません。

若い警官が検査キットを持って消え、私とベテラン警官は向い合って座って結果を待つ事になりました。

 

その③へ続きます

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