ある日の覚せい剤検査 その3

覚せい剤検査その② の続きです。

 

結果待ちの時間

検査だけに、結果が出るまで少し待つようでした。私はお茶を飲みながら、警察署の気が滅入る一室に座っていました。

「なんかやけに落ち着いてますね」

感心したようにベテラン警官が言いました。「検査の結果待つのって、緊張しませんか?」

もっと緊張しろと言わんばかりの口ぶりです。

「クスリなんて本当にやってなくて完璧にシロのはずなのに、検査の不備で間違ってクロが出てしまう可能性もあるんですか?」

逆に質問してみました。挑発的な態度はマイナスにしかならないと分かっていましたが、言い返さずにはいられません。

「そんなことはまずないですよ!」警官はちょっと腹を立てたように言いました。

「なら、特に緊張する必要はありません。なにもしてないんで」

しばらくして、若い警官が室内に入ってきて、ベテランに何ごとか耳打ちしました。

「……シロですね。はい、じゃあもう帰っていいですよ。ごくろうさんです」

もう私にはなんの興味もない、といった感じで警官が言いました。引き止められても困りますが、あまりにもあっさりとしたその態度に思わずため息が出ました。

とにかくこうして、無駄な検査は終了したのです。

 

妙な連帯感

私が部屋から出ようとすると、「探偵さん」と呼び止められました。

「今後も、あの場所行って調査するんですか?」とベテランがちょっと困った顔で言いました。

「依頼人の方に頼まれれば」と私も同じような顔で答えました。「行かないわけにはいかないでしょうね。……仕事ですから」

それは困ったなー、という顔で警官も苦笑します。

「これで私も潔白だと分かってもらえたし、今後は顔パスというか、通報されても放っといてもらうわけにはいきませんか?」

そのくらいは言ってもいいかな、と思いました。なにしろ二時間近く拘束され、尿検査までさせられたのです。

「私らも、市民に通報されたら現場に行かないわけにはイカンのですよ」

警官は困り顔で笑いました。「……仕事ですから。探偵さんと同じです」

ほんの少しだけ「仲間意識」や「連帯感」に近いような空気が流れました。

思えば、探偵の私も、警察官の方々も、刑事さんも、そして依頼人も、それぞれの事情があり、それぞれの立場があっただけなのです。そう思うと、少し気も晴れました。

「もし現場に行くのが私だったら、探偵さんの顔は分かりますよ」とその警官は言いました。

私は警察署を出ると、心配していた依頼人とスタッフに「もう大丈夫」という電話をかけました。

 

その後の話

このときの依頼に関しては、初日に確保した材料でなんとかなり、私が再び現場へ戻る必要はなくなりました。

しかし、私の潔白は証明されたものの、その現場で徘徊していたホンモノの不審人物に関しては、解決していません。

警察の方々が、そういった不審者を一日も早く捕らえ、平和を取り戻して欲しいと切に願うばかりです。

市民が安心して暮らし、探偵が安心して調査する為にも。

 

おまけ

二週間ほどして、突然私の携帯電話にこの時のベテラン警官から電話がかかってきました。

「探偵さんいまどこですか」

「大分県です」

「本当ですか」

「本当です」

「また佐賀のあそこ行ってないですか」

「近づいてもいません」

「そうですか。また通報があったんで探偵さんがウロウロしてるのかと」

……早く不審者が捕まるのを切に願うばかりです。

 

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