探偵ひと筋二十年、福岡の私立探偵ブログ

悪党どもの黒幕

むかしむかし、探偵は、それはもうムチャクチャでした。

勝手に委任状作って、他人の戸籍を取得する。

役場の窓口を恫喝して、住民票の付表(引っ越したひとを追跡できる)を出させる。

浮気真っ最中の男女の車をクギでパンクさせ、立ち往生しているところをパシャリと証拠撮影。

百万で人探しを受けておきながら、事務所から一歩も出ず、鼻クソほじりながら「懸命の捜索にも関わらず、発見に至らず……」なんて作文書いて提出。

あんまりムチャクチャやりすぎて、「犯罪者は探偵になったらダメ! 」というレベルの低い法律が作られるほどです(探偵業法といいます)。

しかし、そんな怖いもの知らずだったイニシエの探偵たちが、唯一頭の上がらない存在がありました。

NTTです。

 

探偵と広告規制

やることなすことムチャクチャな探偵は、世の中からもかなり白い目で見られており、テレビCMはもちろん、まともな広告を出すことは許されていませんでした。

しかし、大金払ってでも「他人の戸籍がほしい」「逃げたひとを捕獲したい」「浮気の証拠写真が必要」というひとは世の中には一定数居て、そんなお客さんになんとかアプローチしなくてはなりません。

そこで、探偵・興信所が利用した、唯一の広告手段が『タウンページ』でした。

いわゆる電話帳広告です。

ネット全盛のいま、タウンページなんてアンモナイトとかシーラカンスと同じ。とうに昔話の存在でしょう。しかし、かつての探偵・興信所にとっては「神さま、お大臣サマ、タウンページ様」だったのです。

 

足元見られた探偵の広告料金

悪党が儲けるのは世の常ですが、さらなる稼ぎを求めてタウンページに群がった悪徳どもに、タウンページ側は、それはそれは法外な広告料を要求しました。

上には上がいる……これもまた世の常ですね。

マジで、1ページの広告を出すのに数百万円。それが地区ごとにです。

たとえば福岡の市内の探偵であれば、東区・中央区・博多区・南区・早良・西・城南区と広告料金が必要でした。もちろん、飯塚市、春日市、古賀市、太宰府市と、エリアが増えれば、それだけドンドン加算されていきます。

つまり、手広く展開していた大手の興信所や調査会社は、数千万から、ヘタしたら億単位の広告料をNTTに上納していたのです。

それでも、電話帳にデカい広告を載せれば、すぐ元が取れるくらい客はくる……というわけで、探偵業者・興信所はこぞってこの電話帳広告に大金を注ぎ込み、ページを買いあさりました。

かかった費用はあとで客からムシればいい。そう思ったのです。うん。「おまえらいい加減にしとけよ」という妙な規制法(探偵業法といいます)ができるのも当然ですね。

 

オッサンよろこぶ抽選会

信じられない話ですが、希望者が殺到しすぎて電話帳のページ争奪戦が起こり、抽選にすらなりました。

毎年、広告の更新時期には、NTT主催の抽選会が盛大にとり行われ、探偵・興信所・調査業者の社長たちが一同に介し、クジ引きするのが風物詩だったと聞いています。

アタリを引き当てようものなら、ガラの悪いオッサンたちが、「ィイイイヤヤヤヤッホホホホォォォォウ! ! 」と大はしゃぎするのどかな光景が見られたそうです。(私は次の世代の探偵なので詳しくは知りません)

年々、NTTは広告料を吊り上げました。

フッかけられた探偵・興信所業者は、そのぶん調査料金を高く設定し、依頼人に突きつけました。

NTTに足元を見られた探偵に、足元を見られた依頼人が苦しめられる……。

そんな負のスパイラルが、『探偵暗黒時代』の、もっとも忌むべきシステムでした。

 

暗黒時代の終わり

しかし、長く続いたそんな負の連鎖を断ち切る光明が現れました。

インターネットです。

ネット広告は、探偵・興信所・調査業者にとって革命的、そしてタウンページにとっては致命的でした。

「……これでもう、タウンページの言いなりになって、何千・何億も払わなくていい。髪の薄い、妙に目のギラついた脂っぽい営業担当にゴマすらなくて済む……」

電話帳広告の大口顧客たちは、沈む船から逃げ出すようにタウンページを離れました。

その後の電話帳の凋落っぷりはご存知の通り。いまどき電話帳なんて見るのはお年寄りだけ。凶器に使えそうなほどブ厚かったタウンページが、いまや大学ノートのような貧弱さです。

 

時代は繰り返す

……こうして。

タウンページに大金を払わなくてよくなった探偵は、広告に高い金を使わずに済むようになり、探偵業界の相場も常識的な金額になって、依頼人を苦しめる元凶だった『広告料戦争』に終止符が打たれた……

……というわけにはいきませんでした。

次に発生したものは、ネット上での広告スペースの取り合いだったのです。

なんのことはない、タウンページのころの仕組みが、そっくり移行しただけでした。

 

新たな探偵広告戦争

探偵業者は、ネットの一等地に広告を出すため、今までNTTに払っていた巨額の広告料を、別のカタチで払うようになりました。そして、そのぶんがすべて依頼人の負担となる悪しき体質は、結局変わりませんでした。

価格のバランスというものは、需要と供給で決まります。

いくらネットの海が広大に見えたって、消費者の目に映る場所は限られています。そこにニーズが殺到した結果、広告料金の肥大化という構造は変わりませんでした。

しかし、ここに第二のレボリューションが起こります。

Google様の登場です。

 

……長くなったので、次回「Googleの正体」に続きます。

 

もり探偵事務所は、尾行・証拠撮影を得意とする福岡の私立探偵です。