大学教授のストーカー
また不祥事の話題です。
【68歳大学教授が風俗店女性にストーカー行為 「交際」と勝手に認識か】(FNN PRIME)
いい年をした大学教授が、風俗店の女性に入れあげて、ストーカー規制法で逮捕されました。
名のある大学の教授の「アーやっちゃった事件」ですが、実はこれは二重の意味での不祥事案件です。
記事をよく読むと、探偵が絡んでいるからです。
事件の背景
話自体はよくあるもので、真面目(そう)な高齢男性が風俗にハマり、若い風俗嬢に入れあげて、自分たちは交際していると勘違いし、そのあたりで女性のほうも距離を置き始め、その挙げ句にストーカー化するという内容でした。
同じようなことは日本中でいくらでも起こっているでしょう。違いがあるとしたら、このケースは男性が地位も名誉もある大学教授だったことくらいです。
とはいえ、この男性にも多少の同情の余地はあります。
風俗嬢が、「チョろい太客」と見定めた男性に、恋愛テクニックをふんだんに盛り込んだ営業をかけるのは常とう手段だからです。
「まじめ」「女性経験少ない」「高収入」「プライド高い」という相手であればなおさら、「あなただけは他の客と違う」「こんな気持ちははじめて」「これは商売じゃなくて特別な関係」「もっと会いたい」という姿勢や言動が有効になります。
特に、劣等感とプライドが同居するような相手には、「あなたは特別」というふうに接するのがもっとも効果的で、その挙げ句として、「そうだおれは特別なんだ」と男性が勘違いしてしまうのも、当然の帰結と言えるでしょう。
自信とプライドの暴走
この男性は、足繁く風俗店に通い、女性に猛アプローチをかけたようです。豊富にある金と自信が、間違ったほうに作用した結果です。
そうなってくると、当然、女性のほうもヤバいと感じ、距離をとろうとします。
男性は『愛人契約』を持ちかけていたそうですが、多少の定期収入が見込めても、独占欲が強い面倒そうな老人の愛人に収まるほうが、トータルではマイナス収支と踏んだのでしょう。口うるさいヒモが居たのかもしれません。
やがて男性は風俗店に出禁になります。
しかし、これは逆効果でした。大学教授になるという自己実現を成し、なおかつ自分の地位にも能力にも自信がある男性です。プライドも高く、拒絶されるということに慣れてもいなかったはずです。
私の経験上、ストーカー化する男性は、恋愛にはものすごく劣等感があるのに、他の方面(特に仕事など)ではすさまじく自信家で自己評価が高いひとが多いです。
「相手が自分のことを嫌がる」ということがうまく認識できないのかもしれません。
探偵の登場
女性には会いたい。向こうだって自分を特別に思っているはず。でも出禁食らって店には近づけない。
男性は、探偵に依頼して、女性の所在地を判明させようとします。金に余裕がある人間ならではの行動です。
ニュースでは「探偵に依頼して住所を突き止めた」とありますが、実際は、行動調査のほうもかなり徹底してやらせた可能性があります。
ただし、先に記した通り、「プライドが高く、しかも女性とはちゃんと付き合っている認識」であったのなら、あまり探偵に探らせてはいないかもしれません。
世には、探偵に依頼すること自体を恥ずかしくて情けないと考える、恥ずかしくて情けない男性も居るからです。
探偵のニーズ
依頼されたのは、おそらく「福岡の探偵」の誰かでしょう。しかし、これは受けるべきではない案件でした。結末がそれを証明しています。
とはいえ、目先の売上が欲しい探偵にとっては、この老教授は上客です。
強く明確なニーズと、自分では表立って動けない立場、豊富な資金、わかりやすく操りやすい気質、と悪徳探偵にとってのいいカモだからです。風俗店にとってそうであったように。
探偵の仕事の需要にしたって、なにも「夫婦の離婚問題」や「お世話になったあのひとの捜索」ばかりではありません。ビジネスとして、ニーズには幅広く対応していかねばなりません。
とにかく売上が欲しいという探偵であれば、「これは引き受けるべきではない」という件であっても、金になりそうということで安請け合いしてしまうかもしれません。
特に、リスクがある(他の探偵がやりたがらないヤバい)案件ほど、報酬が大きかったり、営業が容易だったりもしますから、あとは個々の探偵のモラルと経営判断になります。
断るべき仕事
ちなみに、わがもり探偵事務所にこの人物が相談に来ていたら、依頼は断っていました。
年の差恋愛が皆無とは言いませんが、ふつうこの年齢の人物が娘どころか孫くらいの女性のことを「交際している」と言い出した時点で、不自然だと考えます。
その交際が事実なのか、ストーカーのおそれがないか、裏を取るために色々ツッコんだ質問をし、その結果気分を害した相手から「もう結構! あんたには頼まん!」と席を立たれていた可能性が非常に高いです。
しかし、まっとうな探偵であれば、それが当たり前だと思います。
いくら強いニーズがあっても、簡単に依頼が取れても、いいカネになっても、引き受けるべきではない依頼があるのです。
その後は?
この事件の後、そのストーカーに加担した探偵がどうなったかはわかりません。この手の、「探偵絡みのニュース」で、その後のてん末が語られることはマレです。
ただ、「探偵業法」という探偵を規制する法律を遵守していたら、どんな形であれ、「風俗店に勤務している女性を尾行して自宅を判明」という調査に正当性が生じるとは思えませんから、その法律を無視しての受任契約だったのではないかと思います。
そうだとしたら、その探偵もなんらかの処分は避けられないはずです。
私がよくこのブログに(ちょっとハナにつくくらい)主張していることですが、探偵には、依頼人の利益のために動くという強い使命感や、どんな案件でもやり遂げるという責任感が必要です。
また、仕事の性質上、「これはイヤ」「これはヤバそう」と面倒な依頼を避けていては生き残ってもいけません。
面倒な内容だからこそ、わざわざお金を払って依頼するからです。依頼人は、どんなことでも「出来る」と信じて探偵に依頼をするのです。
しかし、探偵を長くまっとうに続けていくのであれば、そして依頼人のことを本当に考えるならば、いくら「出来る」仕事であっても、「やらない」というき然とした姿勢を示すことが、ときには大事ではないかと思います。
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