福岡の私立探偵、大阪に調査へ
コロナの話題ばかりだと気が滅入るので、久しぶりに調査の思い出話をします。
毎年、春になり、美しい満開の桜を見ると思い出す、「天気のいい公園で昼間っからビールを飲みながら、日本屈指のヤバイ場所を張り込みした」ときのことです。
調査業団体の会合
きっかけは、某調査業団体の会合に出席したことでした。
同業者に、真面目に探偵業に勤しんでいるところとそうでないところがあるように、探偵の団体・協会も、マトモなところとそうでないところとさまざまです。
中にはあまり積極的には関わろうという気になれないところもありますが、下手に顔を出すと、多少なりともしがらみが出来たり、相手から妙に関心を持たれていろいろ探られたり(私は特にこっちが多いです)と、愉快でないことが多いので、普段はその類のものには出席しません。
しかし、そのときはたまたま気が向いて、その某調査業団体の会合に出席したのです。
他県の調査会社社長からの依頼
会合の内容には触れませんが、その際にあいさつして名刺交換した他県の調査会社の社長から、後日連絡がありました。ちなみにその会社はもう存在しません。
内容は、「ヘルプを頼みたい調査がある」というものでした。
私はささやかな個人経営の私立探偵ですが、通常、下請けはほとんどしません。
団体の会合に関わらないのと同じ理由で、下手によその仕事を引き受けると、愉快でない体験をしたり、面倒な目にあうことが多いからです。
(自分のところの調査員すら消耗品扱いする代表者も居るのに、他社の人間をどう扱うかは推して知るべし、です)
しかし、そのときは話を聞いてみる気になりました。「大阪への出張調査」だったからです。私は遠出が大好きなのです。
依頼の内容は?
肝心の内容は、なかなかにウサンくさいものでした。
依頼人は妙齢の女性。大阪で外科医をしている男性と婚活パーティで知り合った。しかし、どうもおかしい。話の辻褄が合わないし、カネをせびってもくる(依頼人は父親の遺産で裕福でした)。
おまけに連絡がつかないことが多い。(それに対し、相手は「緊急の手術だった」「受け持ちの患者の容態が急変した」「学会に出てた」などと言い訳)
かなりの距離の遠距離恋愛(九州と関西)で、すぐに会いに行けるわけでもないし、色々聞こうとすると怒る。しかし、金銭面や素性の怪しいところ以外は、顔も悪くないし、人当たりもいいし、不満という不満もない。
つきましては、その相手の素性を調べたい。……そういうよくある内容でした。
よくある内容でないのは、その相手の住む場所というのが、大阪府大阪市西成区のいわゆる【あいりん地区】と呼ばれるエリアだということです。
あいりん地区
旧名である【釜ヶ崎】と聞いてピンとくるひとには説明不要でしょうが、そこがどういう場所か、Wikipediaの一部を引用すると、
……「あいりん地区には路上生活者が多く居住している(大阪市内の路上生活者は、2019年1月時点で確認されただけでも1,002人)。この地域は住所不定の日雇労働者が多いため、人口統計は国勢調査でも明確に把握できていない可能性がある。
NPO団体や宗教団体などが炊き出しなどを頻繁に行っており、実施の際は公園に人が列を作って並ぶことがある。また、この地域の物価(料金体系)は隣接している他地区と比べ、総じて低いのが特徴となっている。一帯は暴力団事務所が多数ある。」……
簡単に言うと、全国屈指のヤヴァイ場所ということです。
あ、ちなみにWikiにはこうも記されていました……「あいりん地区では、たびたび暴動が発生している」
あいりん地区への潜入依頼
どういうルートを使ったかは詳しく触れませんでしたが、そのあいりん地区の居住地は、元請けの調査会社が別ルートから判明させたようです。
本人は、【堀江】(大阪市西区にあるオシャレタウン)在住だと自称していました。ところが、フタを開けると西成だったわけで、もちろん西成の住人の皆様を悪くいうつもりは毛頭ありませんが、やり手外科医の自宅住所としては、ちょっと首を傾げる場所だったわけです。
それを依頼人に告げたところ、「現地に行って、徹底的に本人を洗って欲しい」と改めて依頼されたそうです。
しかし、その元請けとしては、ただでさえ大阪の出張調査なんか面倒だし、しかも場所はあいりん地区(再度言いますが、私個人はそのエリアを悪く言うつもりはありません)。変に探りに行って、ヤバイ目にあうのも面白くない。
よし、会合で会った、フットワークの軽そうなあの若い探偵にでもやらせるか。福岡のもり探偵事務所。
そんな本音があからさまに透けて見えましたが、私はそれを快諾しました。
面白そうだったからです。
2に続きます。