草むらの隠しカメラ」で、ずさんな調査だの、隠しカメラは好まないだの、上から目線の記事を書いた私ですが、かつて一度だけ、草むらに仕掛けた隠しカメラが見つかった事があります。

前回の記事はその痛い経験を踏まえたものでした。当時の私にしても色々と事情があったので、発覚してしまった刑事さん達に対しては同情的でした。

調査という普通でない行為には、時にやむにやまれぬ事態が起こり得るのです。

私がまだ駆け出しの若かりし頃。同業者の知人からヘルプの要請連絡がありました。切迫した状況らしく、今すぐ現場へ急行して欲しいと言われました。

私は、高速道路を使い指定の場所へ赴きました。田舎のラブホテルです。相当に普通じゃない状況のようでした。

現場に到着すると、ヘルプを要請した探偵とその女性スタッフ、さらにもう一人若い調査員が待っていました。フランチャイズ展開をしている大手探偵会社の調査員だと紹介されました。

私以外にその大手の調査員まで招集したようで、それだけでも並々ならぬ意気込みを感じました。

そもそも、探偵はあまり同業他社に協力を要請しません。たいていは自分のところのスタッフで済ませるか、そこそこの大きさの興信所ならば支店の調査員にヘルプを頼みます。

しかし、当時の私には良くヘルプの要請がかかっていました。

探偵業界にも様々な派閥がありますが、特にどこの派閥に所属するわけでもなく独立独歩で仕事を行い、なおかつ必要以上に真面目に調査する私は使い勝手が良かったのでしょう。

自分のところの調査員だけで手に負えずヘルプを必要とする状況にはいくつかあります。

一つは、現場そのものが難しく、張り込む場所やマークするべき人物・車両が多くて単純に人員が足りていないケース。

もう一つは、自前の調査員すべてが対象者に顔バレして怪しまれてしまっているケースです。ようは、調査が失敗する寸前で、なんとか巻き返さないとダメという厳しい状況です。

この時のケースは後者でした。普通の浮気調査でしたが、ラブホテルでの密会を撮影しようとして失敗。相手にバレてしまい、肝心の証拠映像は取れなかったのです。

あらゆる手を尽くして、証拠を確保しなくてはならないところまで追いつめられていた訳です。

私と大手の調査員を助っ人に呼んだのも納得でした。

バレてしまって以降、まともに尾行も出来なかったようですが、怪しいと思われる日に近隣のラブホテルをシラミ潰しに当たるというローラー作戦で、たまたま対象者の車を見つけたようです。

つまり、すでに対象者とその密会相手はホテルの中に居て、いつ出てくるか分からないという切迫した状態です。

それを、相手にバレバレの状況で撮影しなくてはならない訳でした。

「それでお二人に来てもらったわけですよ」と、そのバレてしまった探偵は苦笑しました。

私と大手の調査員は視線を見合わせました。お互い黙っていましたが、心中では同じ事を考えていたでしょう。

笑ってる場合か、と。

2へ続く

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