ライブコマースとは

中国でライブコマースが爆発的に流行っているという記事を見ました。

ライブコマースというのは、人気インフルエンサーが商品を紹介する動画をリアルタイム配信し、視聴者はクリック(タップ)ひとつですぐさまその商品を購入できる、という新しい仕組みだそうです。

ネット利用者(というか人口)の多い中国は、それだけの大きな購買力があります。

その無尽の消費者に対して、直接的な営業をかけられるという仕組みがウケ、中国での売上はものすごい数字になっているとのことです。

このライプコマースに日本の企業や販売事業者も参入を企てているものの、うまくはいっていないとのことで、中国人インフルエンサーや、ライブコマースで物販している事業主が、冷笑ぎみに「そう簡単にいくと思うな」とか「日本は数年遅れている」と話しているというのが、記事の論調でした。

ツッコミどころの多い記事でしたが、中でも特に「それはちょっと……」と思った箇所があります。

 

中国サイドの言葉

ライブコマースで化粧品を売っているという女社長の言葉です。

「コロナでインバウンド需要を失った日本のブランドが、安易にライブコマースで在庫をさばこうと思っても、そんなに簡単な話ではありません。なぜなら、そういう日本の商品は高いからです。その価格でのままでは、ライブコマースで中国人消費者からは相手にされません。あなたたちは、今の価格の半額、四分の一にしても売るだけの覚悟がありますか? それがないのなら、ライブコマースはうまくいかないでしょう。いつまでも日本の製品が中国人に対してブランドがあると思ってはいけません。質がよければ高くても売れるという時代ではないのです」

つまるところこういう内容のインタビューでした。以下、それについての私の見解です。

福岡のイチ探偵がなぜライブコマースに対する私見を述べるかというと、探偵・調査業もまた、こういった新しいネット販売の形態から、逃れられなくなる日が来るかもしれないからです。

 

ライブコマースの本質

私がこのライブコマースの記事を読んで最初に浮かんだのは、『バナナのたたき売り』でした。その次に浮かんだのは、お昼のテレビ通販です。

勢いのいい販売員や有名人やタレントが、よくわからないものを楽しげに実演販売するという仕組みで、新しいどころか、昭和の昔からある、手垢の付きまくった商売です。

ライブコマースなどと格好のいい横文字と、スマホで電子決済という昔はなかったシステムを使ってはいるものの、本質的にはテキ屋商売のように思えてなりません。

有名人による説得と、販売員のノリで、財布の紐を緩めさせるという仕組みに他ならないからです。

この「客の財布の紐を開かせる」というのは、古今東西における商売の肝要で、最先端のシステムであるAmazonですら、「利用者の決済までの心理的障壁」をいかに取り払うかを露骨に腐心しています。

「送料無料」「最安値」「即日発送」というわかりやすいものから、AIのディープラーニングによる購買者の嗜好分析まで。

 

最新ビジネスと本能

ネットを活用したビジネス形態が語られるとき、頭に付けられる枕詞は「新しい仕組み」です。

確かにシステムそのものは、従来にはない仕組みであり、まさに「革新」という言葉がふさわしく思えます。(どちらかと言えば「破壊」と個人的には思っていますが)

しかし、新しく見えるのは外側だけ。

たとえばネットを使った男女のマッチングサービスがわかりやすいでしょう。

SNSというここ最近の仕組みを利用していますが、やっていることは一昔前の「出会い系」だし、さらにさかのぼって大昔からある「お見合い」です。結局は、男と女の出会いという本能に根ざしたビジネスに過ぎません。

結局のところ、ビジネスというのは本能から切り離せないのです。いまや娯楽の定番と化したスマホゲームにしても、一皮めくれば、性欲や射幸心に行き着くものが数多くあります。

最新のビジネスというと聞こえはいいものの、その多くはひとの本能に訴求する販売を、それまでにないルートやシステムでやるというものに過ぎません。

 

タブーと破壊

「新しい」というのはイノベーションによって実現されるものですが、それ以外に、タブーを破ることによってもたらされる場合もあります。

先に私は新しいシステムを「革新」というより「破壊」と言いました。

それは、従来では「禁じ手」とされていた手法を、効率や効果だけに目を向けて平然と行うことが、新しい仕組みともてはやされる場合があるからです。

炎上商法など、まさに典型的なそのパターンと言えます。

 

ライブコマースはどうなのか

中国人インフルエンサーのインタビューをすべて読んだわけではないので、これはあくまで個人的な感想ですが、日本は遅れているのではなく、そもそもの国民性の違いが原因としてあるような気がします。

日本人にとって受け入れがたいことや非常識なことが、中国では当然ということもあるからです。それは正誤とか優劣とかではなく、単にライフスタイルと文化・思想の違いです。

特に中国は、世界最大の人口がでありながら、ヘゲモニー政党制の一党独裁国家です。

言ってしまえば、強力な誰かの意見に追従する国民性であり、ライブコマースと相性がいい性質と言えるはずです。

さらに、そのライブコマース会社の女社長の言葉「売りたければ今の価格を半額、四分の一にしろ」「質がよければ高くても売れるというのは幻想」という言葉も、裏読みするなら「モノの質はいいから、とにかく安値で売れ」というふうに取れなくもありません。

中国の安い商品がすべて「安かろう悪かろう」だと決めつける気はありませんが、通販などで一度でも中国業者のズサンさ適当さ姑息さに被害を受けたことのある消費者としては、「値段はとにかく安く!」「高品質なんて問われない!」というこの女社長の意見に、懐疑的な見方をしてしまうのも無理からぬことのはずです。

 

選び、購入することの難しさ

「何かを選んで購入する」というのは難しいものです。

失敗したくない。損したくない。騙されたくない。後悔したくない。そんな不安は誰だって持っているからです。これは、お金持ちも庶民も変わりません。

そのために、ブランドがあり、口コミがあり、比較サイトがあり、ライバル他社と競合製品があり、保証があるわけです。

しかし、バナナのたたき売りも、縁日のテキ屋も、テレビショッピングも、どちらかといえば消費者の不安をノリと勢いで打ち消し、トンと背中を押して財布の紐を開かせるのに近い商売です。

いわゆるブランドメーカーや、消費者から支持されている定番商品が、そういう形態で販売されることはありません。

そして、(記事を見る限り)ライブコマースは、ブランドや消費者第一の商売とは正反対のところにあるように思えてなりません。

日本人がライブコマース参入に苦戦している理由。

それはひとえに、地に足のついたブランドを育成し、質の高い商品を作り上げ、消費者満足を第一にした商品を販売したい……というビジネス的良心が通用しない世界だからかもしれません。

 

(以上の記事は、個人的な印象を記したものであり、私個人はライブコマースを利用したことがありません。実際はもっと違う形なのかもしれません。それは明記しておきます)

 

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