少女の叫びと中年の選択

2019年9月23日、ニューヨークで開催された『国連気候行動サミット』において、スウェーデンの16歳の高校生環境活動家である『グレタ・トゥーンベリ』さんが注目を集めました。

同会議には、日本でも人気の高い政治家『小泉進次郎』氏も出席しており、そこで飛び出した「セクシー発言」がバッシングを浴びるなど、何かと話題になったことで、それまで国内ではあまり名が知られていなかった少女活動家の知名度が一気に広がったようです。

激しい言葉と表情で「大人たちよ。私はあなたたちを絶対に許さない」と糾弾した彼女の言動については、当然のことながら賛否両論ありました。

賛同は主にグレタ・トゥーンベリさんと同世代の若者たち。

否定派は、中高年層……それも中年男性に多かったと言います。

私はカテゴリ的には後者に属しますが、賛否両方の立場について、それぞれ理解します。

 

中年男たちの選択

グレタさんの言動に一番ムカッ腹を立てているのは、彼女くらいの年齢の子供をもつ中年男性でしょう。

ネット上でも露骨に嫌悪感を示した中年男性が多かったようで、それに対してグレタさん肯定派の若年層や女性たちが、「オッサンは頭が固い。環境問題に意識が低く、華々しく活躍する若者をひがんでる!」と声を荒げ、対立しているという構図です。

しかし、中年男性サイドの立場から考えてみるなら、それは仕方のないことでもあります。

この世の中年男性……つまり『おとーさん連中』は、グレタさんのような娘を食べさせるため、あらゆるものを犠牲にしているからです。

世の多くの中年男性は、娘を、妻を、家族を養うために、やりたくもない仕事をし、下げたくもない頭を下げ、エゴを捨て、主義も主張もこだわりも、あるいは夢も希望すら殺して、収入を得るために身を粉にして働いています。

時には、誰かを蹴落としたり、傷つけたり、何かを奪うことに近いことだってあるでしょう。若者から見れば愚かにしか見えない中年のオッサンたちも、本当はバカではありませんから、自分たちが何をやっているかなんてちゃんとわかっています。

わかっているうえで、天秤にかけるのです。誰かから何かを奪い、自然を破壊して経済活動を行うことと、家族を路頭に迷わせないこと、そのどちらを取るかを。

 

経済活動の理由

グレタさんが目の敵にする『経済活動』とは、大人にとってはつまり『家族を守ること』に他なりません。

自然や環境が大事なのは頭ではわかっていますが、それよりも何よりも家族を食べさせていくこと、飢えさせないこと、苦労させないこと、それこそが中年男性の最優先事項なのです。

なのに、仕事もせず、保護者に養われ、子供にとっての唯一の仕事とも言うべき学業をボイコットして、「大人たちよ! 恥を知れ!」と叫ぶ自分の娘ほどの少女に対して、反感を持つなというほうが難しいでしょう。

「誰のために何もかもを犠牲にして毎日働いていると思ってんだ! キミみたいな子供に毎日お腹いっぱい食べさせてやるためだ!」と感情的になってしまっても仕方ないというものです。

 

1%の富裕層、世界上位の80人

もう少し突っ込んだ話をすると、こういうデータがあります。

1%の富裕層、世界の富の半分を保有へ (CNN)

他にも、「世界の富裕層上位80人の資産総額は、貧困層35億人の資産総額に匹敵する」という話もあります。

身を粉にして会社に勤める数多くの中年男性は、学校をボイコットしてヨットで国連まで行った少女に対して、おそらくこう考えるでしょう。

「自然を壊すほどの経済活動はこの世のどこかに居る大金持ち連中のせいだ」

もし経済活動が『イコール自然破壊』というのであれば、個人のささやかな営みは、この星の大きな気候変動にたいした影響を与えていない、そう言えなくもないという話です。

グレタさんら若者たちに、自然破壊の元凶であるかのように糾弾されている『オトナ』たちとしては、「そういうのは、この世を天上から動かしている大物連中に言ってくれ」というのが本音かもしれません。

これに関しては、学術的・データ的な正当性がどこまであるか、などはそれほど問題になりません。感情的な叫びに対して、大人が内心でどう反発するかという感情論的な問題だからです。

ちなみに、グレタさんはただ感情的なだけでなく、ちゃんと論理的に「私ではなく、科学者の言うことに耳を貸せ」という主張しています。

しかし、そのプレゼンの仕方が、「16歳の少女が学校をサボり声を荒げる」という過激なものである以上、どうしても感情論が先に立ってしまうのは無理からぬ話でしょう。

 

二十年後、三十年後の話

中年男性の肩を持つようなことを歴々と記しましたが、グレタさんの主張や行動自体は決して間違っていません。

地球環境が悪化の一路を突き進んでいることは、生活の実感レベルで誰の目にも明らかだからです。

世界の片隅の小さな島国である日本ですら、平均気温の上昇と、異常な台風や大雨による被害が相次ぎ、『何十年に一度』という規模の天災が、それこそ毎年のように続けざまに起こっています。

さらに、日本に居ると気づきにくいですが、いま世界では、深刻な水不足が始まっています。水不足はそのまま食糧難に直結していますから、やがて世界は、水や食料を激しく奪い合う争乱の時代になるかもしれません。

 

自然治癒力の限界点

そのときになって、慌てて自然を回復させようと考えても、それは手遅れです。地球の自然治癒力には限界点があり、そこを超えてしまうとあとはいくら手をかけても元に戻すことは出来ません。グレタさんが訴える「科学者の意見に耳を」というのはまさにそういった点です。

いま環境保全にまったく関心がない人間でも、水や食料が手に入らなくなれば、足元に火が付き、人が変わったかのように「一秒でも早くなんとかしろ!」と焦りだすのは目に見えています。

それがわかっているからこそ、グレタさんを筆頭とした若者たちは、声を荒げて「私たちの未来を奪うな」と叫んでいるのでしょう。

彼女たちにとって敵である、資本活動の中枢をなす大人は、基本的に高齢で、二十年先、三十年先には生きているかわかりません。たとえば、グレタさんが激しく憎むトランプ大統領は七十三歳です。

しかし、今の十代・二十代は違います。

今のままでいくと、早ければ二十年後には地球環境は取り返しがつかないほど悪化するとも言われていますから、そんな未来を押し付けられる若者たちが必死で声を荒げるのは当然と言えるでしょう。

 

若さという純粋さ

グレタさんに対し、「原始的な生活をしているわけでもない文明人の娘が、経済活動に文句を言うな」と言ってしまうのは簡単です。

彼女は若く、純粋で、一貫した主義も、隙のない理論武装も、徹底したライフスタイルもなく、ツッコミどころも多くあります。

しかし、そんなふうに「反論される余地をたくさん残しながらも胸を張って主張する」ことは誰にでもできることではありません。特に大人には怖くてできません。

そもそも、地球や自然に対する無償で無私で無意味で純粋な愛というものは、守るもののない少年少女時代にしか持ちえないものかもしれません。

おそらくグレタさんにも彼女の賛同者たちにも、粗探しすれば矛盾は数多く見つかるでしょう。

しかしそんな矛盾をものともしない、暴力的なまでに一途な純粋さと、ダイヤモンドのような思い込みと、向こう見ずな明るい行動力は、それはそれでとても貴重なエネルギーなのです。

 

カーボンフットプリント

『カーボンフットプリント』という言葉があります。これは、個人や家庭、そして企業が行う生活・活動で、どれだけの温室効果ガスが排出されるかをスコアリングしたものです。

論理的に環境保全を訴えるのであれば、グレタさんやその支援者は、自らのカーボンフットプリントを公開し、具体的にどれほどその数値が低いかを示さねば、その活動に説得力は生じません。

自らのカーボンフットプリントを下げることにより、文明人としての快適な生活が損なわれたとしても、です。

しかし、矛盾をものともしない純粋な誰かが行動を起こさねば変わらないことも、世の中にはあります。

ことに、誰もが漠然と「このままではやべーだろうなー」と思いながらも先送りにしているような問題は、外部からのショック療法的なものがなければ、解決のムーブメントは起こらないものです。

結局有効な対抗策を打ち出せないまま限界点を超えてしまった日本の少子高齢化問題が、まさにそれを体現していると言えます。

 

まとめ

福岡にも、探偵にも、まったく関係がない今回の記事ですが、私は別にある種の政治的・思想的な主義主張を持っているわけではありません。

むしろ、私立探偵という徹底的に個人主義で生きていく道を選んだ人間です。

しかし、探偵もまた、矛盾した存在である以上、ときには社会の矛盾する問題について真剣に考えるべきというのが私の持論です。

でなければ、頭が凝り固まってしまい、偏ったものの見方しかできなくなる危険があるからです。それはおそらく、矛盾よりも悪いモノなのでは、と私は思います。

それに、以前【大気汚染】という記事を書いた通り、環境については私も無関心ではありません。

最後に、このグレタさん問題への私なりの見解を記します。

自然保護に関しては、個人がいかにカーボンフットプリントのスコアを見直したところで影響力は薄く、結局は世界のパワーバランスを握るビッグプレイヤーが動かないことには明確な対抗策は打ち出せないというのが私の考えです。

しかし、そんな巨人たちを動かすのは、世論であり、目に見えない大きな揺らぎかもしれないのです。

そして、それだけのエネルギーは、個の集合体が互いに影響し合って作り出すものですから、やはりグレタさんのような、矛盾を抱えながらも声を大に出来るピュアな存在は、きっかけとして必要だと思います。

たとえそれが、蝶のはばたきのようにささやかなものであっても。

彼女に対する反感は私にも理解できるし、反論すること自体も簡単なのですが、そういった『ネガティブな行動』は、とりあえず自然環境保護に対して『行動』(それも平和的な方法)を起こした人々の足を引っ張るだけで、いささかのプラスにもならないのだけは確かです。

 

もり探偵事務所は、尾行・証拠撮影に特化した福岡県の【行動調査専門】の私立探偵です。