アニメーション会社放火事件発生

以前にも、【相模原死傷事件】で痛ましい事件の記事を書きましたが、再び信じられない事件が発生しました。

私はアニメーションを見る習慣がない人間ですが、現場人間の端くれとして、職業人としてのアニメーターに尊敬を念を抱いています。

どれほどの労苦と犠牲と努力と矜持をもって働いているか。それだけに、今回のようなてん末に、ただ衝撃と悲しみの念が堪えません。

犯人が重篤な状態であり(2019年8月1日現在)、事件の全容がはっきりしないので、詳細を論じるのは尚早ですが、少なくとも35名もの人命が奪われたことについては、間違いなく日本史に残る殺人事件です。

 

これまでの事件

これまで、大量殺人と言えば、1938年に岡山県で起きた「津山三十人殺し」こと、「津山事件」が有名でした。が、被害者数で言えばすでにそれを軽く超えてしまっているのです。

津山事件では、二時間あまりで二十八人ものひとが猟銃と日本刀で殺害されました。犯人は、猟銃の免許を取得し、念入りに計画立案と準備を行い、射撃の訓練までして犯行に及んでいます。

犯人の妄執と、犯行時間の短さ、そして被害者の人数の多さから、日本を代表する陰惨な事件として歴史に名を残しているのですが、今から約八十年も前の話でした。

これだけ近代化、情報化した現代日本で、今回のような事件が起きたことに、個人的にはとても危惧しています。

犯人は訓練を受けたわけでも、特別な能力を持っていたわけでもなく、凶器も非常に身近でありふれたもの……「ガソリン」だったからです。

 

身近な凶器と狂気

ガソリンは、名前の響きもなんとなく可愛らしく、安価で、取扱いに特別な資格も必要ありません。エンジンのついた乗り物に乗っているひとであれば、日常的に購入するものでしょう。それがいかに危険なものかという意識は、今回の事件が発生するまで、ほとんどのひとになかったのではと思います。

それは犯人すら例外ではないようで、ほんのごく短時間で、世界の歴代シリアルキラーよりも効率的かつ大量にひとを焼き殺した犯人は、なんとライターで火を点け、しかも刃物を大量に持ち込んでいたそうです。

おそらく、ガソリンは、灯油か何かのようにメラメラと、導火線が燃えるようなイメージで火がつくと思っていたのでしょう。

四十歳を越えて、ガソリンの気化による爆燃現象を知らなかったことに驚きを禁じえませんが、知らなかったからこそ、事件後も重篤な状態が続いているわけです。

どう考えても犯人の死刑は免れませんが、事件の解明のためにもなんとか救命を試みなければならない医師たちの心情は察するに余りあります。

ガソリンは非常に危険な物質です。冷静に考えれば、たった一リットルで、一トンを超える鉄の塊を何キロも運ぶだけのエネルギーを秘めています。

車も運転も日常的すぎて、その事実を現実的に考えているひとはそれほどいません。日本でワーストクラスに人間を殺めている凶器は実は自動車ですが、その危険性を認識しているひとがあまり居ないのと同じことです。

だからといって、自動車を禁止したり使わなくするわけにはいきませんから、そこは見て見ぬフリというか、触れられないブラックボックスになっているわけです。
それと同じで、車が生活の必需品である以上、ガソリンも日常からは排除できません。
今回の事件で、私が個人的にもっとも恐ろしいと考える点は、今後、二度と同じことが起きないような対策が思いつかないことです。

 

ギリギリのバランスで営まれる私たちの生活

私たちの生活は、個人の良心と他人同士の尊重、ルールと道徳を守るという暗黙の了解で成り立っています。それが破られたとき、警察が動き、法律が機能し、刑罰が作用するのです。しかし、すべては事後処理ですから、取り返しのつかないことも多々あります。ひとの命がまさしくそれです。

歩道のほんのすぐ脇(場合によっては一メートルも離れていない場所)を、何トンもの鉄の塊が何十キロもの速度でビュンビュン走っていく現実が恐ろしくなるときがあります。
自動車を走らせている人間は、歩行者の命を第一に考え、まさか「ハンドルを左に切って突っ込んでなんかこない」こないという期待と信用のバランスで、歩行者と自動車は狭い世界で共存しています。

この暗黙の了解や信用は、相手が一般的な、ごく当たり前のメンタルの人間に対してのみ成り立つものです。ようは、狂気に支配された人間に対してはまったく通用しない前提ということです。

 

どうすればいいのか? 自衛の方法は?

いつバランスが崩れるかわからない、常人同士の約束事で、ギリギリバランスが保たれている社会。
では、いったいどうすれば安穏無事に生活していけるか。

探偵として、論理的に、建設的な善後策を講じようと思っても、答えを出すことは難しいです。それがはっきりしてしまったのが、今回の痛ましすぎる事件でした。
被害者の方たちは、自分たちの職場で、一生けんめい仕事をしていただけ。誰がどう見ても落ち度もありません。「こうすればよかった」なんて論じる余地はありません。

それでも、何かを考えなければならないとしたら。今回の犯人も、決行までに多少のタイムラグがあり、事前の、予兆めいたものがありました。
行動力は常軌を逸していますが、狂人だけに、隙がないわけではなく、むしろ各地で目撃情報があり、かなり早い段階で不審な点を目撃されています。

その段階で、その狂気に敏感に気づくこと。
世にはびこる「人間の狂気」を楽観視せず、厳しく鋭い目で観察すること。目を背けないこと。
今のところ、それくらいしか思いつきません。

犠牲になった方々に哀悼の意を捧げながら、この事件を風化させることなく、これからも考えていきたいと思っています。

 

もり探偵事務所は、尾行・証拠撮影に特化した福岡県の【行動調査専門】の私立探偵です。