私はタマネギがキライです。
いや、単に好き嫌いなのではなく、「タマネギに含まれる硫化アリルという成分にアレルギーがある」という、れっきとした理由があるのです。
この硫化アリルはタマネギの生の状態に含有されるため、私はそれを蛇蝎のごとく嫌っています。
外食するときなど、メニューを見ては、生タマの気配を敏感に察し、極力排除するよう気をつけます。
しかし、生タマのやつらは、予想もしなかったカタチで入っていたりするので、不意打ちを受けることもしばしば。
とくに最近は、野菜サラダにしれっと入っていることがとても多く、非常に迷惑しています。
おそらくその理由は、キャベツが異常に高騰しているから。
たしかに一玉300円などされていては、コスト面において大きな問題となるのも理解できます。
万能野菜キャベツの代替品として、同じく万能野菜と呼ばれ、そう値段も上がっていないタマネギが使われるのも、無理からぬ話ですね。
なぜ、キャベツの値段がバカ高くなっているか。ニュースでは「天候不良のため」と解説されていました。
が、農家をやっている私の友人は「ウクライナ戦争のせい」と断言します。
? ウクライナ戦争とキャベツ……?
疑問に思ったわけですがそのあたりの詳しい話はここでは避けます。
が、一時的な天候問題ならともかく、先の見えない宇露戦争がキャベツ高騰の真の理由なら、当面は解決せずこのままということで、私の硫化アリル問題も、長く尾を引きそうです。
さて、話を戻しましょう。日本国民を直撃している値上げラッシュ、物価高問題についてです。
今や一年前と同じ価格のものを探すほうが難しいほど。
理由はさまざまですが、特に言われるのが、原材料および燃料費の高騰。
キャベツと戦争が関係するくらい世の仕組みは複雑で、モノの値段の裏側には、目に見えぬコストの網が張り巡らされています。
見えないぶん、どうしても消費者は、値上がりに対して理解を示さず、つい単純な不満をもちがちです。
じつは私ヨーグルトが好きなんですが、ブルガリアヨーグルトが値上がりしたとき、ぜんぜん理解を示さず、「高っ。まじかよ……」と単純に買い控えしてしまいました。
どんなものであれ、価格をちょっと上げた途端に売れなくなる……その定石を身をもって実証したわけです。
だから会社・個人店の区別なく、どんな業種でも値上げはできるなら避けたいのが、中の人の本音のはず。
ひるがえって、探偵・調査業界はどうか。
もともと、同業他社がいくらくらいで仕事を引き受けているのか、非常に不透明な世界であり、ネットで公開されている調査料金など、まったくアテになりません。
しかし、依頼人様から直接聞くところでは、やはり調査料金値上げの傾向はあるようです。
多くの業界にとって、値上げの理由は、物流、原材料、燃料費のコスト増によるもの。
しかし探偵業には原料や在庫というものがなく、直接的なコストといえば燃料費くらい。だからどういう名目で値上げをしているのか、私にもよくわかりません。
そもそも調査業界の料金といえば、困っている人の足元を見てできるだけ吹っ掛けるという、企業努力とは対極にあるもの。
あまりに高いと顧客が逃げていくのは他業種と同じなんですが、それを防ぐため実施するのが、コストダウンによる低価格追求ではなく、「脅し、ハッタリ、トリック」等精神的圧迫による顧客囲い込みという、ちょっとアレな世界です。(すべてとは言いません)
この世界的な価格上昇の中、あえて価格を維持する理由などなく、ここぞとばかりに値上げしていることが予想されます。
では、そういうもり探偵事務所はどうか。
弊所では、代表者である私の方針として、「経費コミコミ」をなんとか維持しています。
超長距離への移動、飛行機・新幹線など高額の移動手段、長期出張における宿泊費用以外、原則として経費請求はありません。
これが探偵業界でどれだけ異質で良心的かは、「追加経費」という名目で、調査後に聞いてもいなかった高額を請求された、依頼経験者にしか分かってもらえないでしょう。
経費コミコミということは、ありとあらゆる値上げが、すべて自社の負担になるということを意味します。
さて、ガソリン代はいうに及ばず、最近とくにキツく感じるのが、ホテル料金の価格上昇。
事務所から遠く離れた現場において、拠点となるホテルの確保が、どうしても必要な場合があります。
各種機材の充電・メンテ、撮りためた映像データの保存管理から、調査スタッフの体調維持まで……。
クオリティの高い調査に、拠点は欠かせません。
かりに依頼人さまから指定された調査時間が9~21時であっても、マジメに結果を出そうとするなら、それ以外……たとえば明け方4時や深夜0時であっても、何かとやるべきことはあります。
だから、ますます拠点が重要なのです。
この拠点となるビジネスホテルの価格が、目に見えて上昇しています。
コロナ後の反動、インバウンド、燃料費高騰、人手不足と、理由はいくらでも思いつきますが、マジで以前の2倍3倍になっているところもありますから、さすがに自社負担するのが厳しくなってきました。
その他にも、ありとあらゆるコストアップの波は、私の探偵業にジワジワ影響を及ぼし始めています。
経費コミコミ。追加請求ナシ。
これは、地味ながら、もり探偵事務所の大きなウリです。
わけのわからない名目の追加経費請求で、思いもしなかった高額に……というのが、探偵業界における悪しき伝統、もっとも多いクレームの一つだからです。
だから私は、依頼人さまのためにも「明朗会計・経費コミコミ」を続けているのですが、これだけあらゆるものの値段が上がると、さすがに厳しくなってきたというのが本音です。
とりあえず、どうすればもっと効率的に、無駄なく調査ができるか。料金を据え置きにできるか。それを考える努力は惜しまないつもりです。
あとは……はよ戦争終わって。