駅の立体交差

探偵がじっさいに現場でどういうことをしているか

探偵がふだんどんな仕事をしているか。

興味をもつ方も多いでしょう。

ですが、口ではなかなか説明しづらく、具体的なイメージは伝えにくいです。

 

ちょっとアレな探偵の中には、You Tubeなどで「リアルタイム尾行動画」をアップし、それなりの再生数を稼いでいるのも居ると聞きます。

プロの探偵が、引き受けた調査のリアルタイム動画をアップしてしまう職業的倫理については、ここでは語りません。

やはり一般人にとって、リアルな探偵の業務は、関心が高いことなのでしょう。

 

そんなわけで、今回は、つい先日じっさいに私が手掛けた調査についてのご紹介です。

ふだんは守秘義務、プライバシーなどの観点から、調査の公開には非常に抵抗があるのですが、それらに抵触せず、かつ、探偵業務の大変さを説明しやすい現場がたまたまありました。

 

じっさいの探偵の現場と調査の詳細

駅の立体交差

 

写真は、とある駅のペデストリアン・デッキ(立体歩道)。

この日は、写真のこの位置から、立体交差を行き交う何百・何千人という人々を、すべてチェック。

たった一人の対象者を捕捉する調査を実施しました。

それも、7時間以上。

 

この写真は、あえて人が居ない時に撮影していますが、電車到着時など、一気に5・60人の歩行者であふれかえります。

一人でも見落としたら、調査として意味がなくなるので、誰一人モレがないよう、文字通り目を皿にしてロックオンし続けました。

調査に参加したウチのスタッフは、これを【超絶変態技能】と評していました。

 

本来この手の、無数に現れる歩行者をすべて面取りする調査は、単独でなんかやりません。

たとえば警察であれば、最低でも四人、ひょっとしたらさらに大掛かりな人数で実施するのでは、と思います。

同業の探偵であっても、写真のように六ケ所の出入口がある現場では、通常は三箇所ずつ、三人組で実施するはず。

一人ですべてを、それも固定した場所に座りながら……なんて芸当、我ながら曲芸じみています。

 

こういった歩道橋は、中央の、人と人とが交わるポイントを上手に選べば、少人数でもカバー可能です。

けれどこの日は、36度という猛暑

とてもじゃないですが、歩道橋の中央に長時間突っ立つなんてマネ、無理でした。

だから、店内に張り込むしかなかったわけです。

 

同じことはスタッフにはできなかったため、交代するわけにもいかず、私がすべて一人でやりました。

(スタッフは別の調査ポイントを担当)

ただ、七時間もの長丁場は完全に想定外。

まったく調査というものは、いつだって、何が起こるかわからないものです。

 

この調査における【コツ】

三種の要素を押さえる

こんな常軌を逸した調査にも、一応、コツはあります。

まず、無数の人が行き交うペデストリアンデッキですが、人の動きは基本的に二種類しかありません。

右から左か。左から右か。

 

さらに、出入口は複数(六ケ所)あるものの、人の流れの方向は、四つに絞れます。

そして、よく観察していると、この四つの流れが混じり合う合流地点のようなものが、3点あることに気づきます。

 

・右と左、二種類の移動の向き。

・四方向の人の流れ。

・3つの合流ポイント。

 

これら三種の要素を頭に含ませておくことで、ただ漠然と無数の人を眺めるより、ずっとシンプルに確認作業を行うことができるわけです。

 

無意識下のフィルタリング

もうひとつ。今回の対象者は若い女性でした。

それにより、老若男女のうち、大部分をフィルタリングすることが可能です。

何百人・何千人という通行人たち……まともに見ていたら、キリがありません。

 

ですが、その中でも、お年寄り、中年男女、若い男性、制服を着た学生、子供については、あきらかに対象外として、除去できるのです。

感覚的に7・8割は除外できると見ていいでしょう。それだけで、ターゲットの捕捉はずいぶん楽になります。

(あくまで無意識下というのがキモ。意識してやろうとすると疲れます)

 

独特の俯瞰態勢

それでも、長時間やっていると、当然のことながら疲労は溜まり、集中力はどんどん失われ、ロックオン能力も落ちてきます。

調査時間が何時から何時までと区切られていたり、交代要員が居れば、ペース配分は気にしなくてもいいです。

しかし、今回の私の現場のように「交代不可」「ターゲットが現れるまで続行」……というケースだと、そうもいきません。

長時間のロックオン作業を続けるには、現場を機械的に俯瞰する、独特のスタンバイ態勢が必要です。

 

コレに関しては、コツなどなく、口で説明できるものでもありません。

ましてや、「探偵ってどんな仕事しているんですか?」と聞かれて、簡単に答えられるものではありません。

こればっかりは、センスのある探偵が、何百という現場で、アクロバティックな調査を必死でこなし、修羅場をくぐり、経験を積んで身につけるしかないのです。

 

曲芸調査はコストの面で優れる

けっきょく、(毎回信じられないことに) 対象者を上手く捕捉して、この日の調査も成功で終わりました。

私はなにも、曲芸じみた調査が可能である自分の力量をひけらかしたくて、こんな記事を書いたわけではありません。

こんな難しいギリギリの調査をしなくても、交代要員や手分けできるチームが居て、もっと安定して、楽に調査ができるなら、それが正解です。

ただ、ひとりきりでこういう調査が可能であることには、明確なメリットがひとつあります。

コストです。

 

本来なら、最低でも二人、成功を見込むなら四人は欲しい現場を、一人でこなして成功させられる……

それが可能であれば、調査員を多数そろえる必要がなくなり、そのコストパフォーマンスは、そのまま依頼人さまの料金負担の軽減に直結します。

今回のこの依頼にしても、この案件のお客さまは、本来の難度の高さから考えれば、驚くほどの低料金で済ませることができました。

(おそらく一般的な調査会社の半分以下)

同様の難しい現場で、これまでも私は、自分が四人分働くことで、ずいぶんと安価に調査を行い、しかも結果を出してきました。

 

この、他の探偵ができないことが可能ゆえの【コスパの良さ】

これは、もり探偵事務所の他にはマネできないアドバンテージであり、私に依頼する明らかなメリットです。

ですが、なかなか依頼人さまに伝わりにくい部分でもあります。

 

依頼人さまに選ばれるため、ホームページやYou Tubeで調査の手の内をさらし、アピールしようとする探偵・調査業者が、ドンドン増えています。

中には、モラルを欠いた、あからさますぎるウケ狙いをしている探偵も居て、私はそーいうのには否定的ですが、依頼人さまにしたって、ちゃんと説明されなければ、探偵の違いなんてわからないもの。

情報公開は必要です。

もり探偵事務所も、弊所なりのやり方で、自分たちの強みを理解してもらえるよう、考えていきたいと思っています。

また、ご紹介できる調査があれば、記事にします。

 

駅の立体交差

ちなみに七時間店内に居ても、なにも言われませんでした。さすがス◯バ。