イヤな男女営業

誠実な探偵・悪徳な探偵 じつは言っていることはほぼ同じ問題

おおぜいの依頼人さまから相談を受け、話を聞いていると、同業者についての情報が、たくさん耳に入ってきます。

それによると、悪質な探偵が呪文のごとく唱える定番のセンテンスがあるようです。

 

「何時間調査すればいいかは、現場次第!」

「GPSが使えない調査は難しい!」

「ぶっつけ本番の調査は困難!」

「調査が簡単か難しいかは、フタを開けてみないと分からない!」

「調査の予約を受けたら他の依頼を入れられない。人や車も手配しないといけない!」

 

これらはつまり、ひと言で簡単にまとめると

「調査はやってみないとわからない!」

ということなんですが、じつはコレ、悪質な探偵だけでなく、私を始めとするマジメな探偵も口にする言葉なのです。

ただ、悪質な探偵とマジメな探偵では、その後が決定的に違います。正反対です。

 

耳ざわりの良い言葉に続く現実

悪質な探偵は、こんなカンジです。

 

「何時間調査すればいいかは、現場次第」

「だから、聞いてもいなかった高額な延長料金が発生!」

 

「GPSが使えない調査は難しい」

「だから、調査員も車両もたくさん用意しなくてはならず、アホみたいな高額に!」

 

「ぶっつけ本番の調査は困難」

「だから、失敗してもやむなし! 料金? 返しません!」

 

「調査が簡単か難しいかは、フタを開けてみないと分からない」

「だから、今回はうまく行かず失敗した! これは成功率99%のうちの1%だ!」

 

「調査の予約を受けたら他の依頼を入れられない。人や車も手配しないといけない!」

「だから、キャンセルだろうが、延期だろうが、フルの料金もらいます! ●●万円!」

 

つまり、「調査はやってみないと分からない」という探偵世界の常識が、

調査前、あれほど自信満々に、都合のいいことばかり言っていた探偵が、失敗した理由

にされてしまっているワケです。

現場の不確実性、探偵業の特殊性を逆手に取った、逃げの手口と言えましょう。

 

マトモな探偵はどうか

私はどうしても、こんな無責任な言動はできません。だから、こんなカンジになります。

 

「何時間調査すればいいかは、現場次第」

「だから、費用をコミコミにしたり、追加のない、負担の軽いプランも検討する」

 

「GPSが使えない調査は難しい」

「だから、『GPSだけ使う極端に安いプラン』『無意味に人員を使う極端に高いプラン』の両方を避ける。頭を使った効果的な調査を提案」

 

「ぶっつけ本番の調査は困難」

「だから、少しでも準備は万全・慎重に。その時間が無いなら、経験豊富な探偵が、ベストの手法で手がける」

 

「調査が簡単か難しいかは、フタを開けてみないと分からない」

「だから、電話や面談で「ウチに任せれば絶対大丈夫」「かならず結果を出す」などと、簡単に言わない。常にリスクを想定する」

 

「調査の予約を受けたら他の依頼を入れられない。人や車も手配しないといけない」

「だから、柔軟でフットワークが軽い個人探偵の、少数精鋭に強みがある」

 

悪質な探偵とマジメな探偵はどうやって見分ける?

調査はやってみないと分かりません。

それは何年探偵を続けても、何百・何千の現場をこなしても、どうしようもなく実感することです。

だからこそ、私は電話や面談で、無責任なことは絶対に言いません。

依頼人さまには、「100%なんてない」と、ていねいに説明します。現実と、ドラマやゲームは違うのです。

 

このように、悪質な探偵とマトモな探偵は、口にする言葉は同じでも、その後の言動は正反対。

でもそれを確かめるには、じっさいに依頼し、失敗せねばなりません。それが、探偵探しの本当に難しいところ。

おまけに、一度でも悪質な業者に引っかかった人にとっては、もり探偵事務所も同じようなことを言ってるようにしか見えないでしょう。

「調査はやってみないとわかりません」と。

(さいきん、他の探偵社で大失敗した人と話しましたが、そんな感じでした。「アンタも他の探偵と同じようなことしか言わんな」と完全に懐疑的でした)

 

営業面では、悪質な探偵、超有利

困ったことに、成約前では、悪質な探偵のほうが魅力的に見えます。

強気。自信満々。成功を前面に押し出し、失敗のシも口にせず。都合のいいこと、耳ざわりのいいことしか言わないからです。

また、巧妙でトリッキーな課金方法のため、正々堂々と明瞭な料金を提示する探偵より、安く見えてしまうのです。

そして、もっとも悪質探偵に有利で、マジメな探偵に不利な点。

優良でマジメな探偵は、依頼人さまを失望させたり、文句を言われることを何より恐れます。

けれど、悪質な探偵は、依頼人をガッカリさせようが、激しくクレームをつけられようが、まったく意に介しません。どこ吹く風で、ノーダメージ。

契約書で自分たちを守り、クレームには逆ギレ。返金要求には絶対に応じず、口コミに低評価を付けられても、損害賠償をチラつかせたり、自作自演工作をすることで、うまく対処。

良心やプライドを捨てれば、どんな下品なことだって出来てしまう……その良い見本が探偵業です。

 

優良な探偵は生き残り、悪質な探偵は淘汰される。が……

私の感覚では、昔はこんなふうではありませんでした。

悪質な業者は、もっとザツで、頭も悪く、言ってることもムチャクチャだったりと、一見してわかりやすかったものです。

しかし、最近は違います。悪質な探偵はより巧妙になり、優良な探偵と同じようなことを言い始めているのです。

そして、あきらかに経営的には、悪質な探偵が有利です。それが今の探偵業界の抱える大きな問題点。

もちろん、それは短期的なことであり、ビジネスの競争原理でいうと、悪質な探偵はいつか淘汰され、業界から退場するでしょう。

しかしそれまでに、営業面で不利なまっとうな探偵が、シノギを削り合いながら生き残っていけるか、というのは大問題。

また、運悪く初めて出会った探偵が悪質だった依頼人さまにとっては、

「探偵なんて口だけ」「高額なのに無意味」「探偵はみんな悪質」と思われてしまうのも、決して無視できない問題です。

 

この、【誠実な探偵・悪徳な探偵 じつは言っていることはほぼ同じ問題】に対する解決手段を、必死に考えていますが、なかなか答えは出ません。

とにかく、縁があって自分の目の前に現れた依頼人さまに対しては、誠実に対応する。

もり探偵事務所が引き受けた依頼は、全力で結果を出す……

今できることは、それくらいでしょうか。

 

若手探偵