お茶

探偵業界に異変?

あくまで私の感覚ですが、昨今の探偵業界には、あきらかな異変が起こっているように思えます。

具体的には次の二点です。

①広告のアナログ回帰

②余裕のない (なりふり構わない) 業者が激増

それぞれ見ていきましょう。

 

①広告のアナログ回帰

何度か記事にもしましたが、さいきんは本当に「浮気調査 探偵」という立て看板をよく目にします。

(スタッフによると、マツコ・デラックスさんのテレビ番組でも、ネタとして取り上げられたとか) 

あの立て看板、じつはイメージ以上に高額です。

これで低料金なら、広告の布石のひとつとして、とりあえず出してみているというのもわかります。

でも私が聞いた話では、立て看板をあちこちに出した場合 (どこか一箇所という業者はほとんど居ません)、数百万円単位の費用がかかるそうです。

つまり、立て看板を出す探偵・調査会社は、限られた経営資源を注力しているということ。

 

世の中すっかりデジタル化している昨今、「立て看板」なんてものに大金をかけるのは、トレンドに逆行した動きと言えるでしょう。それはなぜか。

理由は次の二点と考えています。

「ネット広告や動画サイト、各SNSといった現在主流の広告媒体は、完全にレッドオーシャン化しており、高額なわりに競争は激しく、費用対効果が低下していること」

そして、

「【SEO対策】は金をかければそれで必ず結果が見込めるものでもなく、コントロールがとても難しい (というかGのハラひとつ)こと」

ようは調査会社・探偵事務所は、デジタル広告のチキンレースに疲れ果て、すでにブルーオーシャン化していたアナログ広告……立て看板に回帰したという見立て。

 

ここでひとつおもしろい現象があります。

じつは、もり探偵事務所はネット広告にまったくお金をかけていません。

専業の探偵で、下請けを一切やっていないのに広告にカネをかけないところは、珍しいのではないでしょうか。(探偵インフルエンサーのぞく)

だから我がもり探偵事務所は、SEOにチカラを注ぐご同業に比べ、ネット検索順位は地味でした。

しかしここにきて、その順位が知らないうちに上昇しているのです。

 

とくにお金をかけたとか、特別なSEO施策を講じたわけでもないのに。

これはつまり、お金をかけて検索上位を保っていた他業者が、予算を打ち切り、ネット広告から撤退したことで、検索上位の定位置から消え、もり探偵事務所が勝手に繰り上げ上位になった……

そういうカラクリなのかもしれません。知らんけど。

そういう意味では、「もり探偵事務所の検索順位が上がる」というのもまた、探偵業界の異変のひとつでしょう。

 

②なりふり構わない業者の激増

さて、私が実感する探偵業界の異変は、じつはコチラが本題です。

ここのところ、相談者・依頼者さまから「ほかの探偵の悪いハナシ」をやたらと聞かされます。それもちょっと普通じゃないほど。

内容自体は昔からある苦情がほとんどです。

「信じられないくらいボラれた」

「ホームページでは安かったのに、追加請求でメチャクチャ高くついた」

「希望の日時に調査してくれなかった」

「報告書もマトモにくれなかった」

 

強い違和を感じるのは、次の二点。

 「それぞれの程度がより悪質にになっていること」

 そして……

 「これまでけっこう優良業者と思っていた探偵・調査事務所の悪い話を耳にすること」

 

よりパワーアップしている探偵の悪質さ

「信じられないくらいボラれた」

 ……本当に、昔から、いっこうに絶えない苦情です。しかし、このボラれ具合がちょっと常軌を逸しています。

 以前までは、高額請求と言っても「80~150万」くらいの幅でした。

 それが、最近では200~300万という高額を、探偵・調査会社に請求されているようなのです。

 弁護士だってなかなかこの金額は取りません。というか、企業案件でもない限り、こんな金額はペイできません。

 (離婚の慰謝料の相場は50~150万くらいです)

 

「ホームページでは安かったのに、追加請求でメチャクチャ高くついた」

 この苦情がより悪質になってきています。具体的な数字も聞きました。

 「8万と書いてあったのに、じっさいは48万請求」

 「見積もりでは20万と聞いたのに、なんだかんだと追加請求されて180万になった」

 業者側の口実はぜんぶ同じ。

 「探偵の現場はやってみないと分からない」

 「想定よりも日時が伸びた」

 「やってみたら難しく、人員や車両の増加の必要があった」

 

 ……たしかに、その言い分には、不可抗力なところもあります。

 もり探偵事務所だって、ネット表示の金額で必ず一律とは限らず、多少増えることがあることも、否定はしません。

 けれど、

 「8万と表示したけれど、じっさいは15万くらいになった」

 「22万でやってあげたかったが、どうしても40万はかかる調査だった」

 コレくらいならまだ常識の範囲内でしょう。(8→15万 22→40万は許容範囲と個人的には思います)

 だけど「8万→48万」「20万→180万」は明らかにダメでしょう……。

 

「希望の日時に調査してくれなかった」

 この苦情も最近聞くようになりました。論外です。

 探偵の調査はただやれば良いというものではありません。依頼人が「どうしても」という日時は絶対です。

 車がトラブル起こそうが、調査員が熱出そうが、親が死のうが、業者側の個人的な事情なんて一切問わず、石にかじりついてもその調査日時は厳守すべきである。

 それがプロを名乗る探偵の絶対のルールのはず。

 

 なのに、調査員側の勝手な都合で「一番やって欲しかった日時に動いてくれなかった…」という苦情を何度か聞きました。

 正規料金よりもずっと安いサービス価格で「動けるときに動く」という契約ならまだしも、正規の、それも私から見て取りすぎだろうという金額 (1日20万以上) を取っておきながら、

 「すいません、その日は難しいので次の日にズラします」とか言い出したり、

 開始時間に現場に到着できず、対象の出に間に合わなかったり

 これでは文句を言われて当然。というか、探偵としてプライド無いの? ……とわりと真剣に思います。

 

「報告書もマトモにくれなかった」

 これも定番中の定番。最近、依頼人さまから福岡のとある探偵の、信じられないくらい低レベルな報告書を見せられました。

 探偵学校の生徒か、というほど素人くさい報告書でした。(それでも30万円以上取られたそう)

 一丁前に「部外秘! 他者には絶対漏洩しないこと! もし破ったら損害賠償請求する!」などと注意書きされてましたが、逆だろと思います。

 こんなチンケな報告書でカネ取って、アンタらが賠償請求されるぞと、わりと真剣に思いました。

 

 そして、もうひとつの現象があります。

 逆に「めちゃくちゃガワの立派な、でも中身はスカスカの報告書で高額請求」という手口もチラホラ見るようになりました。

 同じ探偵から見て、いや依頼人から見ても、中身のまったくない報告書で、対象者の後ろ姿や、意味のないアップ、あとは延々と建物の写真だけが大量に記載された、ただの観察日記みたいな報告書。

 けれど、立派な装丁、凝った表紙、ハイクオリティな用紙、不動産建築を参考にした仰々しい書式などで、とにかく見た目だけは高級感を出しているシロモノです。

 情報の価値としては3万円くらいなんですが、そのご立派な報告書で180万円払わされたそうです。

 この件を知人の弁護士に相談しましたが、 

 「依頼人が求める情報はまったく載っていないものの、商品として体裁が整っていることで、たとえば弁護士を通じて「ボッタクリされた! お金返して!」と声を上げても、なかなかその言い分は認めらないだろう……」

 とのことでした。つまりは泣き寝入りです。

 

優良な業者と思っていた探偵の悪いウワサ

 長く地元福岡で探偵をしていると、よその探偵・調査業者のさまざまなウワサが耳に入ってきます。

 たいていはロクでもない話なんですが、中には「比較的キチンとしている優良業者」の話も聞いたりします。

 けれど、そういう優良であるはずの探偵の、良くない評判が最近は聞かれるようになりました。

 どことも成約せず、ひたすら探偵を探し続ける相談者がときどき居ます。

 そういう相談者は、性格や予算面で問題があることが多く、そういう人は別の探偵に電話したとき、他の探偵の悪口を言いがちです。

 けれど、それを差し引いても、その「優良と思っていた探偵の悪い話」は、具体的で信ぴょう性が感じられました。

 

 この話が事実だとしたら…

 「優良というウワサもじつはアテにならない」

 「その調査事務所の経営者や方針が変わってしまった」

 「経営が悪化して、キレイ事でやれないくらい追い詰められている」

 のどれかでしょうか。わかりません。

 

誠実な探偵がメイワクを受ける

こんなふうに苦情・トラブルが激増していることに対する私なりの分析は、

「ひょっとして、食えていない、経営がヤバい探偵が増えている?」

……というもの。だから、どこもなりふり構わずメチャクチャしているのでしょうか……。

でも、こういうメチャクチャする探偵が増えることは、マジメに探偵業に取り組んでいる者にとって、とてつもなくメイワクな話なのです。

一部の悪質な業者が苦し紛れにやっているだけ……

そう、静観できないだけのマイナス・インパクトがあり、業界の存続にすら直結する、致命的な問題と言って過言ではありません。

その理由はただ一点。

 

「誠実な探偵も、悪質な探偵も、言ってることは基本的に変わらないから」

 

……これに尽きます。

 

「何時間調査すればいいかは、現場次第」

「GPSが使えない調査は難しい」

「ぶっつけ本番の調査は困難」

「調査が簡単か難しいかは、フタを開けてみないと分からない」

「調査の予約を受けたら他の依頼を入れられない。人や車も手配しないといけない」

「調査はやってみないと分からない」

 

悪質な探偵が、高額請求の口実や、ミスしたときの言い訳として口にする定番のセンテンス。

しかし、じつはこれらは、マジメな探偵も口にする言葉でもあるのです。

このあたりは、さらに長くなるので、いつか別の場所で。

 

2023年はようやくコロナも明け、世に活気が戻りました。

反面、探偵業界には、水面下でまた何かしらの動きが起こっているのを、肌で感じます。

来年はどんな年になるのか。これからの探偵業界はどうなるのか。

考えても仕方ないことですね。

他者に振り回されることなく、自分は自分の信念を貫き、理想の探偵像を追求するだけ、です。

 

探偵後ろ姿