探偵の社会的地位
「探偵」をまっとうなビジネスとしてを考え、真剣に業務を遂行している人間にとって【探偵業の社会的地位向上】は悲願と言えます。
もり探偵事務所代表である私、森もその一人です。
わたくしごとで恐縮ですが、他の業種からドロップアウトして流れてきたわけでも、なんとなく調査会社に就職して独立したというわけでもなく、探偵を目指して勉強し、望んで【私立探偵】になった身だからです。
言ってみれば、生涯の仕事として探偵を選んだわけです。
しかしそんな私の個人的な思い入れとは裏腹に、探偵業の【社会的認知度・信用度】は残念ながら高いとは言えません。
探偵の社会的認知度が低い理由
その理由は様々ですが、特に、【資格や試験がなく、新規参入が容易】であることが真っ先に挙げられます。
特別な技能や資格が無くても、所定の手続きを済ませれば開業自体は誰でも出来るわけです。
私は宅地建物取引士の資格を持っていますが、別に不動産業界に居たわけでも、関心があるわけでもありません。
単に、国家資格としてポピュラーなものだけに、【難度的な水準】が知りたいという理由で試験を受けてみました。
その結果、「同程度の水準の資格が探偵業に適当なのでは」という認識を持ちました。
探偵には、現場における肉体的な能力や、コミュニケーション力、総合的な人間力が求められますから、長期間の猛勉強が必要な【難度が高い資格】は現実的ではありません。
勉強だけしてきたという、頭でっかちのひとには務まらない業務なのです。
しかし、届け出さえ出せば、誰でもロクに勉強せずすぐに開業出来てしまう現状は、顧客である依頼人様の立場から考えても、いささか問題があるように感じます。
業界の自浄作用
レベルの低い事務所や依頼人を食い物にするような悪徳業者は遅かれ早かれ淘汰されます。長くても数年、早ければ数か月から半年ほどで廃業します。
しかし、そういう『遅かれ早かれ潰れる調査業者』が廃業に至るまでの期間、縁があって依頼した人が存在したとしたら、その依頼人は「探偵に依頼しても無駄だった。失敗した」という残念な結果を甘受することになってしまうかもしれません。
また、参入が容易であることは、副業として丁度いいということでもあります。
現に、在庫や常設の売り場を必要としない探偵業は、副業にする人間がとても多い業態でもあります。近年、その傾向はますます強いと感じます。
副業で探偵をやって何がいけないかと言えば、別の本業の収入がある副業探偵は、非常に安い金額で仕事を引き受けることができるという理由からです。
もちろん、業界相場をはるかに下回る低料金での仕事のクオリティは、やはり相応のものであると言わざるを得ないでしょう。
最近私が情報筋から聞いたところによると、福岡県でも「とりあえず探偵業者として公安委員会に届け出を出し、ふだんは別の仕事をして、依頼があったときだけ探偵になる」という副業探偵が増加しているそうです。
そういった副業探偵は、依頼を受けても「一年に数本」程度らしいです。それではプロとは言えません。
国家資格の樹立を願う
業界の自浄作用や生存競争にだけ任せるのではなく、探偵業の社会的地位向上の為にも、一定の参入障壁があればと思います。
何年も受験勉強が必要な資格は必要ないと思いますが、探偵業界全体の水準向上を見込める水準の国家試験が設立されることを望んでいます。
そして、資格や試験がない現状だからこそ、目の前のひとりの顧客、ひとつの依頼、ひとつの現場と真摯に向き合うことが、探偵業の社会的地位向上に繋がる、という意識でありたいと考えています。
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