探偵業界の今後を考える
最近とくに考えます。
我々探偵は、これから先の時代、どうなっていくのか。
探偵業界の有り様はどう変わるのか。
そもそも、探偵が業務として成り立つ時代は続くのか――。
20年ちょっと業界の片隅に居させてもらっていますが、そんな私から見て、探偵業界はじつに逆風続き。
これまでも、先行き不安になるような事件や出来事が、たくさんありました。
リーマンショック。探偵業法の設立と規制罰則の強化。旧来の広告モデルの崩壊。個人情報保護意識の高まり。
スマホ・ドラレコ・GPSの普及による素人探偵の増加。
そして、コロナパンデミック。
厳しい生存競争と 探偵会社の苦渋の選択
もともと探偵業界は、生存競争の厳しい、新陳代謝の激しいところでした。
新しい探偵が次々に現れては、数年以内に消えていく……そんなシビアな世界です。
ですが、コロナの逆風は、すさまじいものがありました。
これまで盤石の営業を続け、何度も危機的状況を乗り切ってきた、大手調査事務所や探偵事務所が、いっせいに閉業あるいは規模の縮小を余儀なくされたのです。
今は、ネット広告が全盛で、業界の実態がつかみにくくなりました。
が、もし電話帳広告メインの時代であったら、次年度のタウンページの『探偵・興信所』欄は、激変していたことでしょう。
リーマンショックで吹き荒れた 探偵のリストラの嵐
かつてリーマンショックのときもそうでした。
あの大不況下、探偵会社や調査事務所は、生き残りを賭けて、思いきったリストラを敢行しました。
調査員をいっせいに解雇したのです。
私も、付き合いのあった優秀なベテラン探偵から「
」と聞かされ、驚いたことを覚えています。生き残るため、現場に出る調査員たちを口減らしして、限られた経営資源を広告や営業に注力する……
それが、当時の探偵事務所・調査会社経営者の、苦渋の選択だったわけです。
しかし、我々探偵事務所の本分は、受けた依頼をこなし、調査の成果を依頼人に提供すること。
たとえ、営業が仕事をとっても、現場に出る人間が居なければ、依頼人に渡すものが作れない……
かんじんの調査をやる人間を削って、どうサービスを提供していくというのか。
答えは……調査の外注でした。
外注で生き残った調査会社と、放逐された腕利き探偵
人件費という、もっとも重い固定費を節減するため、調査員をリストラし、その穴埋めとして外注調査員を使い始める……
これが、リーマンショックのときに起こった、探偵業界の事変でした。
現在、個人事務所を営んでいる探偵の中には、この時期、大手調査会社をリストラされ、独立を余儀なくされた人も多いはず。
そして、私のようなフリーの探偵のところに、調査委託の話がたくさん来たのもこの時期でした。
酷い条件が多く、(そりゃそうですよね。あっさり調査員のクビ切るような代表者ですから)、私はほとんど引き受けませんでした。
しかし、依頼そのものは不思議と途切れず、世紀の大不況の影響も、私はそれほど感じなかったものです。
おそらく、業界じゅう調査員がリストラされまくったことで、まともな仕事ができる探偵が絶滅寸前になり、私にアドバンテージができたのだと推察します。
歴史に残る大不況。私のような個人探偵事務所が乗り切れたのも、そういうカラクリがあったからです。
自分だけが生き残れるほど 生存競争は甘くない
ただ、経済というものはスケールの大きな生き物であり、その中に居る限り、影響は免れないものです。
いくら個人探偵が不況に強いからといって、自分だけが暴風雨の中、無事に生き残れるかといえば、それほど簡単な話ではありません。
大手調査会社、中堅探偵事務所、下請け専門のフリーの探偵たち……
様々な形態があってこそ、業界の健全性は維持されるもの。
業者間の【競争】がサービスの質を高め、【比較】がシステムを流動化させます。
そして【淘汰】【更新】が業界を浄化し、緊張感を高め、消費者を保護するのです。
少子高齢化、未婚化で 探偵業はお先真っ暗……のはずなのに
しかし、コロナ太りという言葉が現すように、補助金や低金利の融資等のバラマキにより、金が余っている業界もあります。
そういう金余りの業界が、なぜかやたらと探偵業界に進出する流れが、水面下で発生しています。
正直私から見て、探偵業界は少子高齢化と晩婚・未婚化で先行きは不透明。むしろ悲観的と言ってもいい。
なのに、探偵業界に夢を見て、乗り込んでくる新規業者が跡を絶たず、戸惑います。
他県の調査業者から見て、福岡県はよほど魅力的な商圏に見えるのでしょうか。ぞくぞくと乗り込んできています。
こういった新規参入の動きは、福岡の探偵業界の人間だけに関わる話ではありません。
依頼者さまにとっても、じつは大きな影響を受けることにもなるのです。