先日開催された『九州調査業協会研修会」にて、弁護士の河津典和先生から、不貞による夫婦離婚問題についての解説を受けました。

前回の記事で書ききれなかったことをあらためて記します。

 

不貞による夫婦離婚問題について

浮気は、法律用語では『不貞行為』といって、民法上の『不法行為』の一種とされています。

不法行為によって損害を被ったひとは、相手に対して損害賠償請求ができると法律で認められていますから、浮気されたひとは、その配偶者に対して、お金を請求出来るわけです。

だからこそ、我々探偵・調査業者は、この『不法行為』を成立させるための、確固たる証拠を確保するのです。

しかし、中には下記のような少し変わったケースがあります。

  1. 「性行為に至らない関係の場合、不貞行為(浮気)だと認められるか」
  2. 「入籍していない内縁関係の場合、不貞行為が成立するか」
  3. 「同性間(男と男、女と女)の性的行為の場合、不貞行為と言えるのか」
  4. 「法律上、【不貞行為】であると認められなかった場合、浮気した責任はまったくなくなるのか」

それぞれのケースについて、解説がありました。

 

「性行為に至らない関係の場合、不貞行為(浮気)だと認められるか」

配偶者以外の相手と接触し、どう見てもお互いに好意をもった特別な関係で、しかし性行為にまでは至らない場合。

実は、私が調査していても、こういうケースは比較的よくあります。

確かに浮気相手らしき人物と密会はしていたものの、ドライブや食事だけで、ラブホテルには行かないという状況。

理由は様々です。そのデートのときはたまたまそういう流れにならなかった。時間や肉体的な余裕がなかった。女性のほうのカラダの事情。警戒している。または、プラトニックな関係である、などなど。

ピンポイントで最低限の時間だけ調査するプランであれば、調べた日がたまたまハズレだったということもあるでしょう。

しかし、接触自体は確認したし、ラブラブな雰囲気の、あるいは手をつないだりキスしたりしている写真は確保できたとして、それで浮気として成立し、賠償請求は行えるか。

……答えは、「できない」

見た印象や、雰囲気等は考慮されず、不貞行為の成立には「明白な肉体的接触」が必要です。ラブホテルに入るか、個室で長時間二人きりで過ごすなどの、状況証拠がなくてはなりません。

 

「入籍していない内縁関係の場合、不貞行為が成立するか」

結婚して籍が入っていない場合、相手が他の誰かと浮気しても、「不貞行為」として認められないか。愛人は泣き寝入りするしかないのか。

それほどよくある状況ではありませんが、このようなケースの場合、大事なのは、内縁状態の期間です。

というのも、民法上、内縁の妻であっても、成立要件を満たせば「事実婚」として、妻と同様の権利が認められるからです。

妻と同等の権利が認められるということは、不貞行為に対して賠償請求も可能ということです。

……答えは、「できる」

ただし、内縁関係での浮気の賠償請求は、金額が低くなる可能性が高いとのことです。

 

「同性間(男と男、女と女)の性的行為の場合、不貞行為と言えるのか」

いわゆる『LGBT』……セクシュアル・マイノリティの問題です。

男性同士、女性同士の恋愛についての造語で、【L】……レズビアン(女性同性愛者)、【G】……ゲイ(男性同性愛者)、【B】……バイセクシュアル(両性愛者)、【T】……「トランスジェンダー(性別越境、性別違和)の頭文字をとった、比較的新しい言葉です。

世には、このような人びとが少数ながらもちゃんと居て、その権利は認められるべきとされています。

しかし、問題は、自分の夫や妻がその【LGBT】だった場合です。

理由は様々ですが、このようなマイノリティの人びとでも、通常の異性間結婚をすることがあります。そして、中には浮気をするひとだって居ます。

まず「そもそも両性愛者だった」というケースもありますし、「本当は同性愛者なのに、世間体や経済的な理由から偽装結婚した」というパターンもあるでしょう。

そのようなひとが浮気した場合、「男と浮気した夫」「女と浮気した妻」という特殊なケースが生じます。その際、通常の「不貞行為」にあたるかどうか、という問題です。

 

弁護士さんによると、類似のケースが希少で、判例も少なく、判断の難しい問題とのことです。マイノリティ(希少)な人びとの問題であり、なおかつ、その中で浮気するひとはごく少数でしょうから、当然と言えます。

……答えは、「認められない」

(ただし、最近は変わりつつある)

裁判の結果である「判例」は、時代とともに少しずつ変わっていくものです。新しい価値観は新しい判例を生み、新しい判例は、新しい法的根拠を作ります。

LGBTの浮気問題は、今はまだ数も少なく、定義上は「不貞行為には当たらない」とされていますが、今後はわかりません。

 

「法律上、【不貞行為】であると認められなかった場合、浮気した責任はまったくなくなるのか」

上記の例で、「不貞行為」を認められなかった場合、相手の自分に対する責任は一切ないのか。相手はやりたい放題、やったもの勝ちでなにもオトガメなしなのか。

実際はそんなことはありません。

「不貞行為」には厳密に相当しなくても、民法上、「婚姻を継続し難い重大な事由」という『離婚原因』に該当する可能性が認められますから、離婚自体を求めることは可能です。

有責配偶者に対しては、有利な条件で離婚請求が出来るでしょう。

 

その他の「不貞行為の話」

他にも、弁護士さんからは興味深い話を聞けました。

 

慰謝料の支払い義務のない浮気相手?

最近の報道で、「不貞行為によって離婚した場合でも、浮気相手の第三者(例えば夫と浮気した相手の女)は、慰謝料義務を負わないで済む」という内容があったそうです。

弁護士や探偵の仕事を否定するような、重大な事例となり得るケースですが、この報道にはカラクリがあり、実際はミスリードを誘う発表のされ方だったようです。

この『浮気相手』は、不貞行為についての慰謝料は請求されなかったものの、夫婦関係を壊した責任としての『慰謝料』はしっかり払っているとのことでした。

単に名目上の問題であって、自分の犯した不法行為の償いとして、お金は払っているわけです。

それを、あたかも、「浮気した愛人でありながら、不貞行為の慰謝料請求はされなかった」との誤解を招く報道がなされたわけです。

浮気問題だけに限りませんが、ニュースというものは、限られたスペースでの数行の文章だけで発表されるものであり、その背景や詳しい事情は、見えない場合が多いです。

おまけに、発信者はそれを承知の上で、ときに意図的に受け手の印象を操作することがありますから、早合点は禁物です。

 

慰謝料の相場(2019年版)

慰謝料の金額は、婚姻期間、子供の人数、不貞行為の悪質さなどを考慮して決められます。

現役の弁護士さんによる最近の慰謝料相場は、「100~300 万円」とのことでした。

地域性もあるでしょうが(今回の講師は熊本県の弁護士さんでした)、福岡の探偵である私の実感としても、やはり同程度という認識です。

また、余談ですが、不貞行為は「共同不法行為」といって、浮気した本人とその相手とが二人で行う悪さですから、慰謝料の支払い義務も、当然両方が負うことになります。

もし、どちらか片方が慰謝料を全額支払った場合、その半分を、共同不法行為の相手に請求できます。

つまり、浮気した旦那が300万払ったとしたら、その男は浮気相手の女に150万請求できる、ということです。(実際、そういうケースはマレだと思いますが)

 

探偵の料金の請求

浮気をされた被害者は、探偵にかかった調査料金を請求できるか。

これに関しても、弁護士さんから体験に基づく解説がなされました。

結論を言うと、「出来るが、たとえ契約書や領収書があっても、全額の請求を認められるかはわからない」

常識的な金額であれば認められる可能性は高いものの、例えば100万とか200万などの高額の探偵料金をそのまま相手にかぶせられるかは、難しいとのことです。

探偵・調査業者の中には、100万200万の高額の契約に誘導し、

「どうせ全額、浮気した相手に請求できますから、実質の負担はゼロですよ」

……と営業するところもあるそうです。

弁護士さん自身も、「自分の依頼人の中には、探偵からそう言いくるめられた人も居る」と話していました。しかし、実際、それは難しいということは知っておくべきです。

 

もり探偵事務所は、尾行・証拠撮影に特化した福岡県の【行動調査専門】の私立探偵です。