男二人

つい先日、出張で長崎に行ったときのことです。

長崎市内のとあるビジホに泊まったんですが、若い男二人がロビーで立ち話していました。

ひと目見て「ああ。ご同業だな」と分かりました。

この業界に長く居ると、そういうのがすぐ見分けられるようになります。

私が宿泊したそのホテルに調査対象者が居るらしく、出てくるのを張り込んでいる様子でした。

そしてじっさいに、その若い男たちは探偵でした。

なぜ確信したか。自分たちで言っていたからです。

張り込みがヒマだったのでしょう。

依頼内容、調査日程、進捗状況、浮気相手の女性の素性、職業、見た目についての失礼な感想(顔50点おっぱい90点)、しまいには対象者の名前や車、だいたいの住所、勤務先(九州の大手企業)まで……。

ベラベラ、ベラベラ。

あたりをはばからぬ大声で、じつにいろいろ話しており、すべて私の耳に入ってきました。

同じ探偵として、じつに情けない。

どこの探偵事務所かまではわかりませんでしたが、(それでもその気になれば特定できるだけの情報は得られました。熊本)

まがりなりにも諜報の世界に生きる人間が、守秘義務どころか周囲に聞こえるほどの大声で機密を漏洩するとは。

もう少し緊張感と節度をもって仕事して欲しいと切に願います。

ていうか、私と同じくこのロビーに居合わせた一般の方が、この会話を聞き、

「お。もしかして探偵? 張り込み? おもしれー。アップしたろ」

……と、コッソリ動画に撮ってTwitterにでも上げたらどうするというんですか。

ためしに私も少し撮影してみました。

おしゃべりに夢中なこの二人は、まったく気づきませんでした。私はSNSにアップしたりなんかしませんが。

プロの探偵が、一般人に隠し撮りされ、油断している情けない姿をさらされてしまったら……

信用問題とか守秘義務以前に、恥ずかしくてもうプロは名乗れないと思いますがね。

 

男二人