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ジャイアン効果と不祥事のはなし

劇場版ジャイアン効果と探偵

国民的アニメ「ドラえもん」の悪役・ジャイアンが、劇場版アニメでは友情に篤い頼れる存在になり、妙にいいヤツに見えてしまう……

こんな経験は、ある程度以上の年齢の方ならば、ご存知だと思います。

私は勝手にこれを「劇場版ジャイアン効果」と呼んでいました。

が、実は社会心理学において、れっきとした現象として立証されていました。

「ジャイアン効果」などではなく、「ハロー効果」というのが正式な呼称です。

 

劇場版ジャイアンに作用する「ハロー効果」「ゲイン効果」「ロス効果」

乱暴者で嫌われているジャイアンが、映画版ドラえもんのときは頼れる男としてよく見えるのは、心理学の「ハロー効果」「ゲイン効果」「ロス効果」を組み合わせたものです。

ハロー効果とは、目立った特性を持つ存在が、見た目からの強い刷り込みにより、『キャラクターを断定』されてしまうこと。

(ジャイアンでいうと……「身体がでかく力が強い」→「のび太をいじめるイヤな奴」→「ドラえもんワールド一の乱暴者キャラ」)

ちなみに、ハローというのは「Hello」ではなく「HALO」

光の輪という意味です。

いわゆる天使や仏様の背中から刺す後光というとわかりやすいかも。

ようは、このバックライトによって、対象が過剰評価される現象のことを、ハロー効果と呼ぶわけですね。

 

典型的なハロー効果

例えば「両親が音楽家です」と紹介されただけで「きっと音楽が得意だ」と勝手に評価をしてしまうのは、典型的なハロー効果です。

アフリカ系黒人が、無条件で「スポーツ万能」に見えるのもそのひとつです。

「見た目が美しく上品」だから「性格も知的で優しい」と勝手に決めつけるのも、よくあるハロー効果。

ハロー効果は、見た目の印象の強さゆえの過剰評価ですから、それが逆に作用すると、すさまじいマイナス・インパクトをもたらします。

両親が音楽家なのに音痴だったら、ものすごく悪目立ちするでしょう。

黒人さんでバスケットが下手くそだと、なんだかとても残念な気がします。

性格の悪い人間なんてこの世にいくらでも居るのに、見た目が美しい人が意地悪だったら、必要以上にイヤな人間に見られるはず。

 

ゲイン効果とロス効果

ハロー効果で過大評価されていたひとが、勝手にマイナスの過大批判を受けることを「ロス効果」と言います。

それとは真逆に、いやなヤツ・ダメなヤツだとマイナス評価をつけられていたひとが、ポジティブな再評価を受け、過大なまでにもてはやされることを「ゲイン効果」と言います。

「不良がちょっといいことをしただけで、ものすごくプラスに評価される」

……これこそまさにゲイン効果の極みです。

 

さて、世の中では、日常的に犯罪が行われています。

生まれつきの悪人も居れば、魔が差しただけひとも居るでしょう。

追い詰められて人間が変わってしまったことで、犯罪に走るしかないひとも居ます。

犯罪者の数だけ、理由やドラマがあるはず。しかし、中には最悪のマイナス・インパクトを与える犯罪もあります。

それが、特定の業種による「あってはならない」犯罪行為。

(例を挙げると「警察官の犯罪」「税理士の脱税」「医師の痴漢」)

なぜ、特定の職種か犯した犯罪が、決して許されない裏切り行為なのか。

それはその職業が、ハロー効果を最大限に利用し、大きな信用を得ているからに他なりません。

(「警察官→正義の味方」「税理士→几帳面でルール遵守」「医師→高潔で信用できる」)

ふだんメリットを受けているからこそ、それを裏切ったときのダメージもまた大きいわけです。

 

ハロー効果を利用した業種

例えば、警備会社はハロー効果を最大限に利用している業種です。

あえて警察に似たコスチュームを着用することで、民間企業でありながら、公的機関のように見られ、信用を得ています。

警備会社のスタッフは、警察に似た服を着ているだけで、公務員でもなんでもありません。サラリーマンです。

しかし、そんなサラリーマンを、あたかも公的機関のように信用して、顧客は警護を委託するわけです。

だから、信用を裏切るような真似は絶対にすべきではありません。

もし、その前提を破ってしまったとき、大いに叩かれるのは仕方がないことです。

そして……探偵もまた、ハロー効果の恩恵に預かっている業種のひとつなのです。

 

探偵の責務。それは「嘘をつかないこと」

フィクションの世界において、『探偵』は事件を解決するヒーローです。

私たち、リアルの探偵とそんなフィクション探偵の間には、大きな距離がありますが、クライアントにとっては、「探偵 = 特別な存在」という認識があるはず。

それこそ、まさに典型的な【ハロー効果

だからこそ、高い料金を払って依頼をしようという気持ちになってもらえるのです。

 

そんな我々にとって、ロス効果の発生する、許されざる行為……それは「」です。

真実を映す鏡である私たち探偵が、依頼人様をだまし、期待を裏切るような真似をする……

そのときこそ、ロス効果により、我々探偵は【悪徳探偵】というレッテルを貼られ、最悪のネガティブイメージを植え付けられるのです。

ハロー効果で信用を得ているからこそ、我々探偵は、ふつうのひと以上に「ウソをつけない」……

そう、強く思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この記事を書いている人

探偵もり
福岡市出身。福岡大学法学部卒。2000年に「もり探偵事務所」開業以降、福岡でも珍しい専業・独立の私立探偵として、数多くの現場をこなす。調査歴23年。受任数1500件以上。得意な調査はバイクを使った尾行、聞き込み、潜入調査。国家資格として【行政書士】、その他【宅建士】【大型自動二輪】を所持。趣味はドライブと紙の本を読むこと。