ミステリアスな探偵のミステリアスな機材
探偵はミステリアスな存在……。
最近、さまざまな職種の人と意識的に会うようにしていますが、誰と会っても、そういうふうに見られます。
「探偵さんって意外にフツーの人ですね」
……そう言われてしまわないのは、我ながら良かったと思いますが。(笑
今回は、探偵のミステリアスの象徴たる、秘密ガジェットについて語りましょう。
探偵ならではの秘密ガジェット
探偵のミステリアス性をことに象徴するのが、調査機材ではないでしょうか。
「やっぱりスパイグッズとか使うんですか?」
出会ったひとに、そうよく聞かれることが、それを物語っています。
たしかに、身の回りを見まわしてみても……
……自分自身は見慣れていても、一般人から見れば、怪しい (そして魅力的な) ガジェットばかり。
探偵はどこから機材を仕入れるか?
みなさんのイメージでは、探偵機材は、専門のルート (プロショップや情報屋) から仕入れていると思われるかもしれません。
特別な業者が、スペシャルメイドで設計・制作した、何十万・何百万円もする高額機材。
それを購入できるのは、信用と実績あるプロだけ……
と。たしかに一昔前まで、そういうところもありました。
しかし、今では、けっこう中国製のカメラや記録機器を使っています。
そして、その仕入先は……Amazonです。
Amazonをあなどるなかれ
「Amazonって……シロウトかよ!」
とツッコミが入りそうですが、それがなかなかバカにできたものでもありません。
Amazonでは、国内では一般流通していないスパイグッズが、豊富に売られているからです。
そもそも国内の業販で、スパイグッズを専門に扱うことは難しいです。
ニーズがあまりにニッチで、限られているからです。
(家電やゲームと違い、誰でも定期的に購入するものでもありません)
マニア雑誌に広告が記載されているガジェット業者や、一応店舗を構えるセキュリティグッズ販売店もあります。
しかしそんな販売店でも、無数の怪しいガジェットの、豊富なラインナップを網羅することは困難です。
Amazonのメリット。それは、有象無象の業者から、直接仕入れることが可能なこと。
そしてその業者は、ほぼすべてが、中国業者です。
中国産スパイグッズのメリット
Amazonの良さは、豊富な中国製スパイグッズ販売業者から、直接仕入れることが可能なところ。
では、その中国製スパイグッズ……いわゆる中華製にはどういう特徴があるか。
メリットから見ていきましょう。
安価
なんと言っても、最大のメリットがコレ。安価という点。
スパイカメラなど、検索すればいくらでも出てきますが、そのほとんどが、驚くほどの安価で売られています。
(だいたい1万円以下)
ソニーやパナソニックなど、国産メーカーの電子撮影機器の値段を考えると、冗談みたいな金額です。
昔の探偵が使用していた秘匿カメラや遠隔撮影装置は、高額なのが普通でした。
カメラ1台10万超えなんて当たり前。
しかも、そんな高額機材を、調査現場という特殊な環境で使用するのです。
見つけられて回収されたり、雨でぶっ壊れたり、酷使がたたってすぐに使えなくなったり……
探偵の機材はそもそも消耗品ですが、高価な機材だと、気軽に消耗品としては割り切れないものがあるわけです。
とあるベテラン探偵など、一回の現場で設置したカメラの総額が50万円を超えている場合など、
目を離している間に壊されたり盗まれたりしないか、心配で心配で、胃に穴が空きそうだった……と回顧していました。
その点、中国製の安価な撮影ガジェットなら、いくらでも消耗品として扱えます。
バリエーション豊富
個人的には、この点が中華製の一番のメリットと思っています。
中国産のスパイ・ガジェットは、とにかくユニークなものが無数にあります。
中国という土地柄のせいなのか、電子機器の制作技術の高さゆえか、はたまた中国人がスパイグッズ大好きなのか……
とにかく、日本の電子メーカーが絶対作らないような、風変わりな電子機器を、中国の業者は大量に作ります。
メガネ型カメラ、マウス型盗聴器、ペン型ボイスレコーダー……
そのまま使えるスパイグッズは言うに及ばず、
様々な用途に応用できる超小型デバイスや、 を開発・販売しています。
探偵が、素人向けの秘匿グッズ……マウス型や電卓型、USB型のカメラや盗聴器をそのまま使うことはほとんどありません。
むしろ、改造と応用を前提とした、基本的な小型デバイスこそ、中華製の真骨頂と思います。
Amazonと中華製ガジェットのデメリット
Amazonで買える中華製グッズが、メリットしかないのであれば、探偵は廃業です。
みんなAmazonでスパイグッズを買い、それで調査をすればいいだけの話になるからです。
しかしそうはならないのは、そこに無視できない大きなデメリットが存在するから。
それぞれ見ていきましょう。
ハズレがとにかく多い
中華製ガジェット最大の欠点は、コレ。
安価でユニークな反面、商品として見た場合、ひとつひとつのクオリティが低く、とにかくハズレが多いこと。
同業の探偵には、「中華機材を買うときは、同じものを5つ買い、1~2つ当たればヨシ」……と言う人も居るくらいです。
日本のモノづくりの、そして日本人の消費者意識と同様の感覚でいると、この「ハズレがあること前提」という購入形態は、なかなか受け入れがたいものがあるでしょう。
だからこそ、中華商品の口コミは非常に荒れており、「☆1と☆5のバラつきがスゴい」という現象が起こります。
一般消費者は「このカメラぜんぜん使えない……けど安かったからこんなモンか」と諦めて、レビューに文句を書けばそれで済みます。
しかし、我々探偵は、ここぞというとき、必ず撮影を成功させねばならないシビアな仕事です。
ハズレ商品は、そのまま依頼の失敗に直結しかねません。
だから、ハズレの商品に当たらぬよう、細心の注意と、それに応じた「中華製品との付き合い方のコツ」が必要になります。
性能が良くなく、安定性も乏しい
たとえアタリを引いても、そもそもの性能が、(Amazonの商品説明に過剰に書かれているほど)良くないのも、中華ガジェットの特徴です。
稼働時間はだいたい説明より短いし、カメラの画素は期待していたほどでもありません。
無線の届く範囲は水増しされているし、なにより連動する中華製アプリは非常に不安定です。
たとえ問題なく稼働していても、とつぜん不具合を起こすこともしょっちゅう。
熱処理がきわめて甘いので、長時間の稼働にも耐えられず、防水処理もまずされていません。
言ってしまえば、電子機器というより、オモチャに近い感覚です。
オモチャをプロユースの調査機材として使うには、2つの方法があります。
改造して性能を補完する。
うまく応用して利用する。
どちらも一般人にはおいそれとマネできませんから、Amazonでスパイグッズが簡単に手に入っても、プロの探偵の仕事は無くならないわけです。
騙し業者もたくさん
中華ガジェットというより、Amazonの問題ですが、とにかくうさんくさい業者であふれかえっています。
純正のパーツを検索しても、コピー商品のほうが大量に表示されるほど。
その中から、比較的マトモな業者を選ぶのは、並大抵のことではありません。
とくに、中華製スパイグッズなど、有象無象のアヤシイ業者の温床です。
まったく同じ商品写真であっても、メーカーは違う、名前は違う、金額も違う、細かいスペックも違う……
我々プロの探偵であっても、どこの業者で買えば良いのか悩むほど。
これに関しては、簡単な対応方法はありません。
独特の経験、選考眼が必要になります。
(それがあっても、けっきょくは……という話になります)
スパイグッズが普及した現代 探偵の生きる道
通販と中華ガジェットの進化により、探偵業界にも大きな変化がありました。
一般消費者の中には、それらを利用することで、探偵へ依頼する必要がなくなった人も少なからず居るでしょう。
探偵としても、調査の手法や機材との距離感が、大きく変わりました。
しかし、いまだ探偵のニーズがあることを考えると、通販による一般人のガジェット購入は、探偵の仕事を絶滅させるほどのインパクトはないということです。
また、SNSなどで見る限り、Amazonで手に入る中華ガジェットをまったく工夫なく使い、シロウトとそう変わらない調査しかできない探偵も散見します。
昔であれば、一般人には手の入らない、ミステリアスなスパイグッズを購入・使用できることは、プロとしてのアドバンテージでした。
しかし、調査機器がネットで誰でも簡単に手に入るようになった現在、これらはもうアドバンテージたり得ません。
簡単に手に入る機材を、プロユースに改造できる技術力……
一般人が及びもつかない発想で使いこなす応用力……
これらこそが、プロのプロたる絶対の武器であると、私は断言します。