福岡の探偵事務所の求人
もり探偵事務所には定期的に「求人していませんか?」という電話やメールが来ます。
個人探偵だから、電話しやすいのかもしれませんね。
(もしくは、福岡中の探偵事務所・調査会社に、片っぱしから問い合わせているか)
昨年も何件か問い合わせが来ました。
中でも、とある女性志望者が印象に残っています。
けっきょく、別の調査会社に就職したらしいですが、その後うまくいっているのか。
今回は、「探偵志望者」についての雑感です。
元・探偵志望者として
「探偵になりたい」という連絡はよく来ますが、「では雇いましょう」と返すことはほとんどありません。
探偵は秘密を扱う商売。
とつぜん電話をかけてきた相手を、おいそれと信用するわけにはいかないからです。
むしろ、依頼でも営業でもない電話が来たら、私はまず「情報収集」を疑います。
すぐに、本当の求職だとわかるんですが、それでも「じゃあ面接しましょう」とは、なかなかいきません。
理由はたくさんありますが、それはまた別の機会に。
とはいえ、そんな志望者に、できるだけ親身になりたい……という気持ちは少なからずあります。
私だって、もとは【探偵志望者】だったのだから。
とある女性志望者からのLINE
あるとき、「そちらで求人していませんか……?」というLINEが来ました。
この手の連絡で一番多いのが、問い合わせフォームからのメール。
気楽ですからね。
次が、直接の電話。
手っ取り早いですからね。
LINEは珍しいパターンです。
でも、内容はとても丁寧な文章で、好感持てました。
と同時に、「これ、同業者の探りかも」と思いました。
丁寧ながらも熱意のこもった、言い方を変えれば、押しの強い文面。
そして、私のことを(サイトの内容を手がかりに)ベタぼめし、もり探偵事務所の内情に興味津々だったからです。
「探偵志望者の第一歩」一山いくらから抜け出すこと
私もいくらか興味を持ち、レスを返しました。
かりに他の探偵の探りなら、逆にこちらがうまく情報を引き出せばいい。
もし本当に情熱的な志望者なら、何かしら情報を与えてあげたい。そう思ったからです。
今度あらためて記事にしますが、探偵志望者にとって零点は、
「いまそちらで求人していますか?」という、工夫もなければ頭も使っていない定型文です。
人間的にも興味がひかれないし、プロ探偵目線からも「先の見込みはないな」と思ってしまいます。
それに対しこの女性は、「自分の素性」「これまでの経歴」「どうして探偵になりたいか」「もり探偵事務所のどういうところに共感したか」
……をとつとつと書いていました。
まず、文章力がある点で、探偵として及第点。(探偵にとって文章力は重要スキル)
それから、ストーリーがあることで、印象にも残ります。
何より私が興味を引かれたのは、「営利重視の探偵ではなく、依頼人のための探偵になりたい」という一文です。
ではなぜ採用しなかったか
探偵志望者からの連絡で、私が興味をひかれることは珍しいです。
だから、それを直接相手に伝えました。「一度お電話してみましょう」と。
けれど、それに対してのレスポンスに時間がかかりました。
多忙らしく、「すぐ折り返します」という連絡が、すぐには来ませんでした。
残念ながら、探偵としての基本その2は「レスポンスの速さ」
その時点で、私の関心も薄れ、けっきょくそれ以上時間を使うことも止めにしました。
探偵志望者のその後
その志望者からは、レスポンスが遅かったことを詫びる、ていねいなLINEが来ました。
相手に対する探偵的な興味は薄れていましたが、できるだけていねいに返事しました。
どうしても探偵になりたいらしく、私は、福岡市内の(自分が知る限り、悪いウワサを聞いたことがない)探偵・調査事務所をいくつか教えました。
その後、忘れかけたころ、
という連絡が来ました。どこの探偵事務所かは聞いていません。
ただ、「嬉しいと同時に不安」とは話していました。
探偵業界の理想と現実の波間
その探偵志望者の女性は、福岡のさまざまな探偵事務所・調査会社を調べ、自分なりに問題提起していました。
その意識の高さと行動力ゆえに、私は彼女に興味を持ったわけですが、
その問題点をじっさいに抱える調査会社に就職したとしたら、早晩、様々な壁にぶつかるのは必至です。
たとえばその女性は、
と言っていました。ほとんどの調査会社で、それは難しいでしょう。
理想や信念を抱いてこの業界に飛び込み、【憧れの探偵】になった人たちをたくさん見てきました。
ほぼすべてが、理想と現実の波間に消えてきました。
「探偵になりたいです!」という人を私が雇わないのは、そういうのを、これ以上見たくないからかもしれません。
珍しく少し興味をもった、探偵志望のその女性。
今も無事に続いているのか……。
彼女もまた、波間に消えていったのか。
それとも、理想や憧れをすり減らしながらも、うまく探偵の世界に同化したのか。
どちらしても、あまり知りたくはないというのが本音です。