探偵にブランドなし ~リーディングカンパニーの無い業界
どんな業界にも【ブランド】があります。
リーディングカンパニーと言われる【業界大手】
全国展開している【チェーン】
テレビやネットなどのメディアでの露出が大きい【有名店】
そして、地域密着で地元からの支持を受けている【人気店】
しかし探偵には、これらのブランドがありません。
大手といわれる調査会社や、全国展開しているチェーンであっても、一般的な知名度がほとんどないからです。
そもそもブランドとはなにか
簡単に言うと「露出度」と「認知度」です。
世間に露出し、誰もがみんな知っていること……これが、ブランドの成り立つ条件。
NIKEやマクドナルドのマークを知らない人は居ないでしょう。
スニーカを履かず、ファストフードを食べる習慣がないひとでも、です。
つまり、
いかに露出し、認知されるかという『ブランド』
……この2つは、そもそもムジュンし、相反するものなのです。
テレビでは、調査会社や探偵社に密着した番組があるようですが、全国的に有名な探偵タレントなんて、まず居ません。
仮にそういう探偵が居たとしても、それは客寄せパンダであって、現場にはまったく出ない人です。
誰もが顔を知っている有名人に、尾行や張り込みは不可能だからです。
口コミがないから、ブランドも成立しない
【ブランド】とは、クォリティの証明でもあります。
ホテルや飲食店であれば、ブランドによって質の良し悪しはすぐに分かります。
それらは、口コミによってもハッキリします。
しかし、探偵業は、口コミが表に出にくい業界です。
仕事の内容が、あまりにも個人のプライベートに関わるからです。
私の経験上、たとえ依頼が成功しても、わざわざ周りにそれを宣伝したり、ネットで「ここの探偵が最高でした」と書く人はほとんど居ません。
探偵に依頼したことは、依頼人にとってはあまり触れたくない、デリケートな部分だからです。
よく考えてみてください。
たとえば、美容整形したひとが、わざわざ病院の口コミに、
「二重にしてもらって、鼻を削ったら、すごく美人になりました!」
……なんて、自分から書くでしょうか?
どうしてもお金に困って駆け込んだサラ金会社の口コミに、
「金利はほかより低かったし、担当者はヤクザみたいな顔してたけど親切で、なんとか金策を乗りきれました! あとでお菓子を持って、従業員さんたちにアイサツに行きました!」
……なんて書くでしょうか。
探偵業界のブランドは あまりにも難しい
密室のような業界だけに、探偵会社のブランディングは非常に困難です。
けっきょく、業者のイメージ戦略は、
「高い技術力や質の良いサービス」
「良心的な仕事内容」
ではなく、
【一等地の事務所】
【立派なホームページ】
【インパクトあるハイテク機材の数々】
【車や調査員を大量に配備しているアピール】
になってしまうわけです。
お客様にブランドをアピールするために、
事務所の高い賃料、ばく大な広告費、高い人件費、営業経費を発生させ、
結果的に、それをお客様に負担させてしまっているのです。本末転倒ですね。
この間違ったブランディングが、探偵業界の料金が高い理由の一つ。
でも、ここで、逆の見方をしてみましょう。
立派な事務所を持たず、
広告にお金をかけず、
機材も調査員もムダに多くない……
そんな個人探偵が、経営を続けていくには、
【高い技術力】
【良心的なサービス】
【顧客満足】
が必須です。でないと、生き残っていけません。
あれ? これってつまり、ブランドの条件ではありません?
そう。無名で地味な探偵事務所こそ、本来ブランドに求められるモノを持っているのです。
そこに、探偵業界の不思議があります。
だから、個人の私立探偵にとって、
地道に生き残っていけていること。
それ自体が、なによりも探偵という【ブランドの証明】とも言えるのです。