現場百回は探偵にはあてはまらない
現場百回という言葉があります。
マジで百回行くことはないにしても、そのくらい足を運ぶ意気込みで、現場仕事に当たれ……という格言でしょう。
でもこのありがたい言葉も、探偵にはあてはまりません。
【現場】を探偵流に解釈すると
……となります。詳しく見てみましょう。
何度も行くな
これはつまり、こういうことです。
「何度も行くな。怪しまれる。そもそも何度も行かないとダメなヤツはセンスがない」
どんな仕事も、いかにマメであるかが、クオリティにつながることは否定しません。
一見完成した仕事でも穴が見つかるかもしれない……
手詰まりな業務にも新しい切り口が見つかるかもしれない……
けれども探偵業は非常に特殊。「現場で姿を覚えられて、いいことなど何もない」という、他の仕事ではあり得ない性質があります。
(ふつうはどんな仕事も、「顔を覚えられること」はプラスに働くからです)
ただでさえ張り込み中は現場から離れられず、周囲に警戒されるリスクは、時間の経過とともに増加していく一方。
なのに、必要のない分まで現場をウロつき、そのリスクを増大させることは、無意味を通り越して愚かです。
現場で確認しなければならないことがあるとして……(必ずあります)
その頻度をできるだけ抑え、いかに少ない回数、短い時間で、必要な情報を得られるか。
これもまた、探偵の力量です。
100回はともかく、10回くらい足を運ばないと情報が得られない探偵は、残念ながらヤル気に見合ったセンスがないと断言します。
一度は行け
「何度も行くな」が探偵現場の鉄則。
そしてこれに繋がる言葉が
「ただし、一度は必ず行け。その一回はためらうな。面倒くさがるな」
私のように、現場にこだわる探偵からはまったく理解不能なんですが、探偵の中には、現場に行くのをためらうタイプが居ます。
面倒くさいのだと。
ましてやGoogleMapなんてものができ、現場の立地が視認できるようになった今、なおさら「現場に行かない探偵」が増えるのでは、と思います。
当然のことながら、モニター上の『固定された風景』だけを見て、いったい何がわかるのか? ……それが私の意見です。
少なくとも、私が現場に行ったとき必ず確認する要素、チェックするポイントなどは、GoogleMapでは分からないことばかり。
そして、限りなく調査リスクを抑え、きちんと成果が出せる調査を効率的に行うためには、それらの要素・ポイントを事前に押さえておくことが必須。
それを「面倒くちゃーい」と放棄する探偵に、私と同じ結果が出せるとは思えません。
私は正式に依頼を受ける前でも、可能ならば必ず現場に行きます。
見積もりどころか、相談段階であっても、です。
依頼料金の正確な見積もりや、調査本番時の進め方のイメージ作りのためには、各種情報は、絶対必要というのが第一の理由。
初めて調査の現場を見たとき、じつに様々な情報が頭に流れ込んできます。
調査の組み立ても思い浮かぶし、リスクも事前に予測できます。なにより、結果への具体的な道筋が、自然に脳裏に描かれていきます。
この感覚は、ある意味、強い職業的満足が得られる瞬間。経験豊富な探偵だけが感じる高揚感とも言えるでしょう。
こういったことを放棄して、開始30分前にならないと現場に行かない調査員は、センスもなければヤル気もない、
「キミなんで探偵やっているの?」と真顔で問いたくなるようなボンクラです。
現場との付き合い方
現場にまるで行かないヤル気の無い探偵は論外ですが、ムダにヤル気にあふれるタイプも、探偵的にはアウトです。
必要以上に現場に固執しても、いたずらにリスクを高めるからです。
むしろ、現場に行かない探偵は、調査失敗のリスクを作っても、調査発覚のリスク原因にはなりません。
どうせ失敗して、あとから私がフォローすることになるなら、妙な警戒だけはされていないほうが、圧倒的にやりやすい、というのが本音です。
へんにマジメなばっかりに、「現場100回!」とばかりにウロウロし、対象者ばかりか周辺住人にまで覚えられ、怪しまれている……
こういうマジメダメ探偵も、フォローする身としては厄介なもの。
他の仕事はともかく、探偵には「押し引きや、力の抜き加減、そして何よりバランス感覚」が大事です。
「現場100回が調査の基本!」というセンスのない探偵も……
「現場? グーグルで見といて、あとはぶっつけで大丈V」というヤル気ない探偵も……
どちらもヤバイということは、依頼人さまも知っておいたほうがいいでしょう。