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隠密であるべき探偵。SNSで自分をさらすべきか?

いまどき探偵ブログなんて珍しくもありません。

福岡で探偵・調査業を営むご同業も、おそるべきペースで、ブログやTwitterを更新しているようです。

しかし、本来であれば、隠密活動する探偵自分をさらすSNSは、矛盾した存在のはず。

今回はの話は、探偵とSNSについてです。

 

自分をさらすのを嫌う探偵は、そもそもSNSには向いていない

私はSNSが好きではありません。はっきり言ってニガテです。

いい調査をしようと思うなら、目立って得することなど、なにも無いからです。

とくに行動調査など、アニメ・攻殻機動隊に登場する光学迷彩(姿が消えるヤツ)が、本当にあればいいのに……と思うこともしばしば。

そんな仕事をずっと続けているせいか、私はプライベートでも目立つが大嫌い。

誰かに注目されると落ち着きません。

 

でも現実は…… 探偵もSNSに力を入れています!

探偵がSNSなんて言語道断! 目立って仕事ができるか!

……というのは、古い話。

今では、ブログやSNSをまったくやっていない探偵は、ほとんど居ないのではと思います。

しかし、探偵ブログにしろ、You Tubeにしろ、本人が好きでやっているとは限りません。

(私も、ベラベラと機嫌よく自分のことを書いているように見えるかもしれませんが、これでも相当ムリしています)

SEO対策のため、仕方なくやっている探偵も居ます。

そして、そんな探偵の大部分が、「なにを書けばいいんだ!」と頭をひねらせているはず。

 

探偵はネタの宝庫 (ただし守秘義務アリ)

私たち探偵に、書くネタがないわけではありません。

むしろ、波乱万丈の日々を過ごしているぶん、ネタの宝庫と言ってもいい。

どんな探偵でも、面白い話や裏話、逸話をタップリ持っています。

しかし困ったことに、「他人が聞いて楽しい話」というのは、「おいそれと外部に漏らすわけにはいかない話」だったりするもの。

守秘義務というおなじみのルールもあります。

他人の秘密を扱うのが商売である人間の職業倫理もあります。

依頼人との信頼関係だって無視するわけにはいきません。

 

ボカして書いても……ネット探偵のおそろしさ

うまくボカしたり、脚色して書くという方法もあります。

が、この情報化社会、私たちが語るネタの断片と、社会に出回る情報のピースを結び合わせ、ついには事実にまで到達してしまうおそるべきネット探偵も存在しますから、油断はできないのです。

かといって、頑張って上手くフィクションに加工したとして、その作業には、膨大なエネルギーが必要となります。

そして、そうまでして公開することの意味と利益が、どこまであるのか……。

そんなわけで、今日も探偵は、スマホ片手に、あるいはPCとにらめっこしながら、

「……いったい何を書けば」

と悩むことになるのです。

 

タブーを破り、SNSでウケを狙う探偵

ネタに困った探偵や、モラルの欠如した探偵、物事を深く考えない探偵は、SNSでのウケのみを考え、探偵として書くべきではないことに手を出してしまいます。

探偵はネタの宝庫。

でも、いろいろな縛りからそれが書けません。

逆に言えば、探偵を縛る3つの鎖……

『守秘義務』『職業倫理』『依頼人との信頼関係』

さえ断ち切ってしまえば、ネタには不自由しないということです。

 

事実、探偵のSNSは、そのタブーを破っているものが、日に日に増えていってます。

「尾行調査中の、リアル配信です!」

なんて動画があると聞いたときは、心底そう思いました。

(そういうのは、けっして依頼人ではなく、ただ動画を見るだけの層にウケているとも聞きました)

 

SNSのビジネス効果。無視して探偵はできない

「誰かを追跡している最中の動画」を、一般公開することの非常識さ、モラルや倫理観の欠如。

それをナチュラルに理解しない探偵が存在し、それを当たり前に受け入れている視聴層が居て、SNS世界では、ウケのいい探偵のほうが名前が売れる。

……この状態に、私は強い危機感を持ちます。

SNSと探偵は、やはり親しくするべきではなく、距離をたもつべきだと。

もちろん、そうは言っても、我々探偵もビジネスですから、SNSの持つビジネス効果を無視はできません。

今後はますますそれが顕著になっていくでしょう。

やりたい放題のSNS無双探偵を後目に、探偵としての良識や義務は捨てぬよう、SNSとおっかなびっくり、付き合っていくしかないわけです。

 

探偵は 現場や依頼人様のことを書くべきではない

調査現場以外でリアルな探偵ネタを探すとすれば、依頼人さま自身のことを書くのはどうか。

(「こんな依頼人と会った」「こんな依頼を受けた」など……ネタの宝庫です)

ほかの依頼人にしても興味のある話題です。と同時に、たいへん扱いの難しい代物です。

これこそ、調査現場以上にデリケートな内容であり、おいそれと公開していいはずがありません。

中には深く考えず、「今日こんな依頼を受けました~」とか「今回の依頼人は〇〇代主婦の方で~」とか、簡単にSNSで書くアホ探偵も意外に多いんですが、私は否定的です。

 

歯医者に行って大失敗した話。SNSのネタとしては手ごろだけど……

先日、歯医者に行きました。

親知らずが見つかり、その歯科の先生に「今度、親知らずを抜くのが得意な専門医が来院するから、そのとき抜くのをオススメします」と言われ、承諾しました。

親知らずの専門医……そんなスゴイ人が居るなら、ぜひお願いしたい。!

しかし、じっさいにその先生の治療を受けたとき、私の親知らずは根が非常にぶっとく、引っこ抜くのがものすごく大変でした。

親知らず専門医ならきっと素晴らしい手際でスパッと抜いてくれる。

……そう期待していたのに、フタを開ければ、ゴリゴリゴリゴリ悪戦苦闘

テコを使うように、必死に力を入れ、私の唇の端を痛めつけながら、ようやく抜けたという有様。

口は血まみれです。

ぶっとい親知らずのオーナーだった私にも責任があるとはいえ、抜歯が得意な専門医とはとても思えない手際の悪さでした。

 

今や誰もが情報発信。だからこそ…

いきなり話が飛びましたが、たとえば、その歯医者の先生が、ブログなりTwitterなんかをやっていたとしましょう。

そして、その日のブログだかTwitterに、

「今日、ぶっとい親知らずのヤツが来てたいへんやった!」

「なにあの根っこ!  メッチャ手が疲れたし、意味わからん! 」

……なんて書いてあったとしたら。

そんなことを書かれた私は、たいへん嫌な気持ちになるでしょう。

だから、私は、依頼人さまのことを、SNSになんて書きたくはないのです。