受付03

隠密であるべき探偵は、SNSで自分をさらすべきか?

いまどき探偵ブログなんて珍しくもありません。

福岡で探偵・調査業を営むご同業も、精力的なペースでブログやTwitterを更新しているようです。

しかし本来であれば、隠密活動する探偵と、自分をさらすSNSは、矛盾した存在のはずなのです。

今回は、探偵とSNSについて話します。

 

自分をさらすのを嫌う探偵は、そもそもSNSには向いていない

私はSNSが好きではありません。ニガテです。

デジタル世代の探偵はともかく、40代以上の探偵なら、だいたいそうではないかと思います。

いい調査をしようと思うなら、目立って得することなど、なにも無いからです。

とくに行動調査など、アニメ・攻殻機動隊に登場する光学迷彩(姿が消えるヤツ)が、本当にあればいいのに……と思うこともしばしば。

そんな仕事をずっと続けているせいか、私はプライベートでも目立つが大嫌いです。誰かに注目されると落ち着きません。

 

でも現実は…… 探偵もSNSに力を入れています

探偵がSNSなんて言語道断! 目立って仕事ができるか!

……というのは、古い話。

今では、たぶんブログやSNSをまったくやっていない探偵は、皆無なのではと思います。

しかし、探偵のブログにしろ、You Tube動画にしろ、本人が好きでやっているわけではありません。

(私も、一見ベラベラと機嫌よく自分のことを書いているように見えるかもしれませんが、これでも相当選んでます)

だから、ほとんどの探偵が、「なにを書けばいいんだ」と頭をひねらせているはず。

 

探偵はネタの宝庫 (ただし守秘義務アリ)

私たち探偵に、書くネタがないわけではありません。

むしろ、普通のサラリーマンなどに比べて、波乱万丈の日々を過ごしているぶん、ネタの宝庫です。

どんな探偵でも、面白い話や裏話、逸話をタップリ持っています。

しかし困ったことに、「他人が聞いて楽しい話」というのは、「おいそれと外部に漏らすわけにはいかない話」だったりするもの。

守秘義務というおなじみのルールもあります。

他人の秘密を扱うのが商売である人間の職業倫理もあります。

依頼人との信頼関係だってあるでしょう。

 

ボカして書くという手もあるが……おそるべき素人探偵のやり口

うまくボカしたり、脚色して書くという方法もたしかにあります。

が、この情報化社会、私たちが語るネタの断片と、社会に出回る情報のピースを結び合わせ、ついには事実にまで到達してしまうおそるべきネット探偵も存在しますから、油断はできないのです。

かといって、頑張って上手くフィクションに加工したとしても、その作業には膨大なエネルギーを必要とするし、そうしたものを書いて公開することの意味が、どこまであるのか……。

そんなわけで、今日も探偵は、スマホ片手に、あるいはPCとにらめっこしながら、

「……いったい何を書けば」と悩むことになるのです。

 

タブーを破り、SNSでウケを狙う探偵

ネタに困った探偵や、モラルの欠如した探偵、物事を深く考えない浅薄な探偵は、SNSでのウケのみを考え、探偵として書くべきではないことに手を出してしまいます。

探偵はネタの宝庫。でも、いろいろな縛りから、それが書けない……先ほどそう記しました。

逆に言えば、探偵を縛る3つの鎖……『守秘義務』『職業倫理』『依頼人との信頼関係』さえ断ち切ってしまえば、ネタには不自由しないということです。

事実、探偵のSNSは、そのタブーに触れているものが、日に日に増えていってます。

「じっさいの尾行調査中の、リアル配信です!」なんて動画があると聞いたときは、心底そう思いました。

(探偵や依頼人以外の、ただ動画だけを見るだけの層にウケているとも聞きました)

 

SNSのビジネス効果を無視して 探偵はできない

「誰かを追跡している最中の動画」を、一般公開することの非常識さとか、モラル・倫理観の欠如を、ナチュラルに理解しない探偵が存在し、それを当たり前に受け入れている視聴層が居て、SNS世界では、ウケのいい探偵のほうが名前を売る。

……これに、私は強い危機感を持ちます。SNSと探偵は、やはり親しくするべきではないと。

けれども、そうは言っても、我々探偵もビジネスですから、SNSの持つビジネス効果を無視はできません。

今後はますますそれが顕著になっていくでしょう。

それで、やりたい放題のSNS無双探偵を後目に、探偵としての良識や義務は捨てぬよう、SNSとおっかなびっくり、付き合っていくしかないわけです。

 

探偵は 現場や依頼人様のことを書くべきではない

リアルな調査現場以外でネタを探すとすれば、依頼人様のことはどうか。

(「こんな依頼人と会った」「こんな依頼を受けた」など。ネタの宝庫です)

『依頼人様についての話題』というのは、ネタの宝庫だし、ほかの依頼人にしても興味のある話題です。

と同時に、たいへん扱いの難しい代物です。

これこそ、調査現場以上にデリケートな内容であり、おいそれと公開していいはずがありません。

中には深く考えず、「今日こんな依頼を受けました~」とか「今回の依頼人は〇〇代主婦の方で~」とか、SNSで軽く書く探偵も意外に多いんですが、私は否定的です。

 

歯医者に行って大失敗した話。SNSのネタとしては手ごろだけど……

先日、歯医者に行きました。

親知らずが見つかり、その歯科の先生に「今度、親知らずを抜くのが得意な専門医が来院するから、そのとき抜くのをオススメします」と言われ、承諾しました。

親知らずの専門医。そんなスゴイ人が居るなら、ぜひお願いしたい。

しかし、じっさいにその先生の治療を受けたとき、私の親知らずは根が非常にぶっとく、引っこ抜くのがものすごく大変でした。

親知らず専門医ならきっと素晴らしい手際でスパッと抜いてくれる。

……そう期待していたのに、フタを開ければ、ゴリゴリゴリゴリ悪戦苦闘

テコを使うように、必死に力を入れ、私の唇の端を痛めつけながら、ようやく抜けたという有様。口は血まみれです。

ぶっとい親知らずのオーナーだった私にも責任の一端があるとはいえ、得意な専門医とはとても思えない手際の悪さでした。

 

今や誰もが情報発信。だからこそ…

いきなり話が飛びましたが、たとえば、その歯医者の先生が、ブログなりTwitterなんかをやっていたとしましょう。

そして、その日のブログだかTwitterに、

「今日、ぶっとい親知らずの患者が来てたいへんやった!」

「なにあの根っこ!  メッチャ手が疲れたし、意味わからん! 」

……なんて書いてあったとしたら。

そんなことを書かれた私は、たいへん嫌な気持ちになるでしょう。

だから、私は、依頼人様のことをSNSになんて書きたくはないのです。