女性探偵

「女探偵」を売りにする探偵業界

探偵はとても広告熱心です。

美容や保険と同様、ネット検索のキーワード単価が、とくに高い業界だそうです。

そんな探偵業界で、定番の売り文句が「元刑事」「女探偵」

前者に関してはパスして、今回は「女探偵」についてお話します。

なお、女性というデリケートな問題を扱うにあたり、私、探偵のもりには、女性に対する不当な差別意識がないことを、あらかじめお断りしておきます。

 

女探偵のリアル

「代表者が女探偵」「女性相談員在籍」「女性ならではのきめ細やかなサービス」

探偵・調査事務所のホームページには、そんなセンテンスが咲き乱れています。

でも、業界の裏事情を少し話すなら、実態はだいたい以下の通りです。

 

女性代表』…… 現場のことはロクに知りません。おまけに、おそろしくドライです。(金銭的にも、性格的にも)

女性相談員』…… 保険など別業界のセールスレディ出身で、押しはやたらと強いものの、調査に関してはシロウトです。

女性探偵』…… 探偵志望の女性は意外に多いため、フィクションではありませんが、いかんせん、調査の現場は超絶ブラックなので、きわめて離職率が高く、ベテラン女性調査員はレアな存在です。

 

こう書くとネガティブに感じますが、私は個人的には「女性探偵」をリスペクトしています。

男でも厳しい世界でがんばっている人もたくさん居るし、女性ならではの美点も多々あるからです。

 

探偵業界は特殊な世界

探偵業界が『女性! 女性!』と押し出すのは、客層がほとんど女性だから。

化粧品や婦人科と同じでしょうか。

しかし、探偵は特殊な業界。

お客さんとのやりとりという営業面も特殊なら、じっさいに女性が働く現場面としても特殊です。

 

【営業面】……女性依頼人は「男性との関係がこじれている」という、本人にとっては恥とも言える失敗体験を打ち明ける。

【現場面】……冬でも立ちっぱなし。夏でも座りっぱなし。車中に4時間とかザラ。警官や守衛、近所のやかましいオッサンから文句。トイレもマトモにいけず……etc

 

女性探偵

 

探偵業界の女性たちの美点

そんな特殊な業界で生きる女性たちは、どういう人たちなのか。

まず、それぞれの美点から説明します。

探偵業界は、他業種よりも女性が活躍できる職場。女性ならばこそ……という数々の美点は、けっして無視できません。

 

女性代表』…… 経営者として、いい意味で肝っ玉の座った人物が多く、調査員というちょっとクセのある人たちを、上手にまとめられる母性的リーダーシップがあります。

女性相談員』…… 探偵の依頼人は、スパッと物事を決められず悩む人が多いため、女性らしい柔らかな物腰ながらも、キッチリ押しこむ営業が、結果的に商談をスムーズにまとめることに作用します。

女性探偵』…… 伝統的に女性は調査現場で重宝されます。女性が一人居るだけで、調査の幅が劇的に広がるからです。

 

女性には数多くの美点があるからこそ、探偵世界で重宝され、業者側もこぞって「女性代表・女性探偵・女性相談員在籍」をウリにするのだと思われます。

しかし、長年探偵業界で生きてきた私から見て、『女性探偵・女性相談員』は、必ずしも良い点ばかりではありません。

 

 

現実の女性探偵の問題点1『女性代表』

女性代表』の問題点……それは「現場を知らないこと

お話した通り、『女性調査員』は決して珍しくありません。

ですが、そこからのし上がって『女性代表』までのぼり詰める女探偵は、ほとんど居ません。

探偵の現場は過酷で、離職率があまりに高いからです。

だから、探偵社の女社長は、生え抜きの元・調査員ではなく、経営しか知らない人がほとんどです。

 

そしてもう一点。

あくまで私の経験における感想ですが、探偵会社の女性社長は、おそろしくドライです。

「冷酷」とすら感じることも。

その冷酷さは、にこやかに依頼人に向けられることもありますが、多くの場合、そこで働くスタッフたちに無慈悲に向けられます。

その際は、にこやかとはほど遠い、「鬼」「ゴッドマザー」的な顔を見せることもしばしば。

 

現実の女性探偵の問題点2『女性相談員』

次に『女性相談員』の問題点。

じっさい、探偵の世界で一番人数が多く、もっとも露出しているのが、この『女性相談員』ではないでしょうか。

相談員……つまりは『営業』です。

じつは探偵業では、営業力こそが最重要視されます。(ヘタしたら調査力よりも)

だから、探偵の営業職には、保険・金融等のベテラン営業ウーマンが、戦力として求められます。

探偵業界に引き抜かれた凄腕セールスレディは、探偵の現場経験も調査の知識もないまま、バリバリ営業力を振るうわけです。

ここに、3つの問題点があります。

 

① 探偵の知識や現場経験のない営業員は、依頼人さまの本当のニーズに応えられない

商品をロクに知らずにモノを売るようなものです。

現場を知らない営業に、探偵の商品たる『調査と証拠』は説明できません。

依頼人からの、現場に関する細かい質問にも答えられず、それが顧客不満足につながる話もよく聞きます。

 

② 依頼人のムチャな要望を安請け合いし、現場の調査員から嫌われる。

探偵は「他人にできないことを高額で引き受ける仕事」ですから、高いお金を払うほうは、現実離れしたムチャな要求をしがちです。

現場の人間なら「出来ないこと」がよくわかっているので、線引きをきっちりします。

しかし、現場を知らない営業だと、その線引きができません。

それどころか、目先の成約欲しさに「なんでもできます! 弊社に不可能はありません!」と言いがちです。

そのしわ寄せが来るのは当然現場。

ムチャな要求で振り回されたあげく、失敗やトラブルも起こります。

 

③ 強引な女性営業員は、同じ女性の依頼人とはぶつかる

じつは、今回の記事で一番言いたかったポイントがコレ。

というのも、決して少なくない女性依頼人が、

「もりさんの前に話した調査会社の女性が、ものすごく強引で、態度もエラそうで、本当に頭にきた」と話しているからです。

『同性』は、必ずしも相性がいいとは限りません。

むしろ、異性のほうが話しやすいこともあります。適度な距離を保てるからです。

 

苦情の内容をざっと紹介すると……

「とにかくマウント」

「あーしろこーしろ、押し付けがましい」

「上から目線」

「金の話ばかり」

「ひたすら旦那の悪口であおってくる」

「じっくり考えたいのに『さっさと離婚して慰謝料ふんだくりなさい』と急かす」

「とつぜん占いとか始めて、意味不明なこと言い出す」

「陰険」

「ハンコ押すまで開放してくれず、とにかくしつこい」などなど……。

 

私がこの話を耳にしたときまず思いついたのが、「女の敵は女」という言葉です。

 

現実の女性探偵の問題点3『女性調査員』

女性調査員について語るのは難しいです。

なぜなら、「ハードな現場で頑張っている女探偵」と「ただの客寄せ女探偵」が、混在しているからです。

厳しい探偵の現場で、それでも本気で頑張っているホンモノの女性探偵たち……。

私は、彼女らを心から尊敬しているし、応援もしています。

それだけに、

「目立ちたい!」「カッコつけたい!」「ギャラがいい!」「チヤホヤされる!」

……というだけの理由で、客寄せ女探偵を演じている人たちに対しては、いい感情を持っていません。

 

探偵は、ホンモノほど露出を嫌います。目立っていては仕事にならないからです。

言いかえれば、露出が多く目立つ『女探偵』ほど、ニセモノ度が高いわけです。

それは、人知れず頑張っている女性探偵に対する侮辱とすら思います。

女性調査員の問題点……それは、「ホンモノとニセモノが玉石混交していること」でしょうか。

 

人知れず頑張る「ホンモノの女探偵」たち

『女性』に関する話題は非常にデリケートです。

そんなつもりはなくとも、女性蔑視だと受け取られ、非難の対象になりかねません。

私は、100%実力主義・結果がモノを言う探偵世界で生きているので、『不当な女性差別』『男女差による出世や評価の有利不利』が、いまいちピンときません。

「同じ能力なのに、男女で役職や給与に違いがある」

「能力は高いのに、女ってだけで正当な評価がされない」

「男性上司が男ばかり重用する」

……こういう話を聞くと「なんでそんなことするの?」と素直に思います。

 

【能力、ヤル気、才能は、男女関係なく、純粋かつフェアに評価すべき】というのが、私の考えです。

これは、逆に言えば【女性だからって過剰に持ち上げたり、美化もしない】ことでもあります。

 

探偵業界が『女性』を過剰に押し出し、女探偵を商品化し、美化する世界だからこそ……

それを現実的に、客観視するというのが、今回の記事の狙いです。

 

探偵業界にホンモノの女探偵は居る! ただし、それは見えないところに……

最後にもう一度付け加えます。

探偵業界にはホンモノの女探偵がちゃんと居ます。

そして彼女らは、ふだん依頼人さまの直接目には触れない場所に居ます。

日夜厳しい調査の現場で頑張っています。

ホンモノの女探偵は、女であることを、ことさらウリにしたりはしません。

 

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