浮気は病気? 本能?
長年、浮気調査を得意分野にしていると、日常的に『浮気男』を見ることになります。
調査対象者がシロで、潔白で、依頼人である奥さんの勘違いだった……ということはほとんどなく、九割以上の対象者が、真っ黒黒だからです。
病気みたいに浮気調査を繰り返す男たち
仕事と言って家を出た男が、いそいそと車を飛ばし、向かった先で女と合流。
食事をし、軽くデートしたあと、ラブホに消える……
一般の人が見たらけっこうドキドキする、ドラマチックでスキャンダラスな光景です。
ですが、探偵である私は、ゲップが出るほど見慣れています。
いまさら対象者がクロだったからといって、特別な感情を持つことはありません。
「さて。撮影撮影」と、淡々と調査をするだけです。
でも、ふと冷静になり、対象者に対して
と思うことがあります。それが不法行為で、家族に対する裏切りであり、大切なものを失うリスクであるのに、何度も何度も繰り返すからです。
浮気は男の本能? 甲斐性?
いい大学を出た高学歴であっても、一流と言える企業に勤めていても、難しい資格を経てついたステイタスの高い職業であっても……
人は、ときとして、浮気という愚かな行動に走ります。
調査しながら私は疑問に思います。
しかし、けっして少なくない男性が、(たとえ本人は浮気未経験であっても)「浮気は男の本能だよ」と言い切ります。
浮気の当事者本人は、「浮気は甲斐性」とのたまうかもしれません。
勝ち組のオスにとって、複数のメスをモノにすることは自然の摂理であると。
「浮気は悪いこと」と 社会は認めている
配偶者が居る人間の不貞行為は、法律でハッキリ認められた『不法行為』です。(民法709条と770条)
『浮気は悪いことである』と、この社会が認めているのです。
とはいえ、私たち探偵が仕事として成立しているのも、その行為が日常的にまん延しているから。
浮気は悪いことですが、同時に、
なのです。
浮気調査のシロの証明は 『悪魔の証明』
さて、2022の夏は、浮気調査の夏でした。
波のある探偵業ですが、妙に浮気調査が重なったのです。
おまけに、不思議なまでに、シロの結果が続きました。
シロというのは「対象者に不貞行為がなく、クリーンである」という結果です。
このシロという判断は、じつはなかなか難しいです。
でも、私もプロですから、十分な期間を調査して、なにも出てこなければ「シロ」と結論をくだします。
そして、それを依頼者さまに報告します。
ただ、依頼者さまにしても、そもそも怪しくない相手であれば、お金をかけてまで調査依頼することはありません。
たいていは「グレーの相手」を調べ、それが「やっぱりクロでした」と裏付けるのが、浮気調査のセオリーです。
だから、こんなふうにシロの調査結果が続くのは、珍しいといえば珍しいことなのでした。
クロの結果は 探偵にとっては満足でも、依頼人には冷酷な宣告
単純に『自分のスキルを発揮する』場面であり、満足感もやりがいもあります。
いくら調査してもなにも出てこない「シロの調査」より、ばっちり証拠を押さえられる「クロの調査」のほうが、仕事としては充実するのも否めません。
ただ、クロの結果は、依頼人さまにとって「あなたの配偶者は、あなたを裏切ってました」という冷酷な宣告です。
無邪気に「今回もいい結果が出せた」と喜んでばかりのモノではないのです。
人間は信じられるか?
シロの調査が続いたこの夏は、「パートナーを裏切らなかった潔白の対象者」を見続けた夏であり、
「誰もかれもが必ず浮気するわけでもないな」と、私も(変な表現ではありますが)対象者を見直した夏でした。
しかし、その後の調査では、いわゆる『クロの調査』が続き、「パートナーを裏切っていた配偶者」を連日見せられています。
とっくに、そのあたりには、自分なりの割り切りができています。
それでも、こうクロの結果が続くと、チラリと頭をよぎるわけです。
人間というのは、信じるに足る存在なのだろうか、と。
シロ VS クロ
年末になり、今年度の区切りが近づいてくると、「今年の調査では、シロとクロどっちが多かったかな」と、個人的な統計をとります。
だいたいは一方的な結果に終わります。クロが圧倒的多数で。
ですが、今年はけっこう『シロの調査』もあったので、そのへんの比率はいつもと違うかも……と考えていました。
しかし、ここにきて『クロの調査』が続き、猛烈な追い込みをかけています。
やはり、今年度も「浮気調査は九割がクロ」という結論に落ち着きそうです。
そして私は、来年もまた、依頼人さまに
とたずねられ、
と答えることになるのでしょう。