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私くらい道具に頼らない探偵も福岡に居ないのでは、と思っていました。(過去形)

スパイグッズも買えない貧乏探偵だからではありません。

道具を使いこなせない不器用探偵だからでもありません。

私が道具に頼らないのは、ひとえに「道具は時として人間を裏切る」と考えているから。

じっさい、よーく調査機材はトラブルを起こし、探偵を困らせます。

今回はその「道具の裏切り」についてお話しましょう。

 

探偵を一番裏切る道具は GPS

GPSを使わない探偵は皆無です。

「道具に頼らない探偵」とドヤ顔している私だって、まったく使わないわけではありません。

GPSを使える調査と使えない調査とでは、労力も、成功率も段違い。なにより、探偵自身の安心感という意味で、精神衛生上のオマモリみたいな存在です。

そんなGPS、探偵から信頼こそされ、裏切るなんてなさそうに見えますが、もっとも探偵を裏切るのはGPSと、私は考えています。

以下の3つのパターンがその原因です。

 

①誤作動・故障・不具合

もっとも分かりやすい裏切りが、機械的な不調。GPSの不具合には大きくわけて3種類があります。

・端末のハード的不具合

・ネットやサーバーのソフトウェア的不具合

・GPS自体の性能の限界

 

 端末のハード的不具合

GPS端末もあくまで機械。たまに故障や不具合を起こし、位置検索がいっさい不可能になります。

浮気調査のタイミングによっては、不倫相手を車に乗せ、さあこれからというときに、「使用不能・位置検索不可」となるわけです。

このストレスと絶望たるや、探偵以外味わえない感覚でしょう。

それでも一時的な不調で、数時間後にでもまた回復すれば、ギリギリで証拠確保に間に合いもするんですが……

たいていの機械的不調は、回収して再起動しないと直りません。

 

コレがなにより怖いのは、防ぐ手立てがないこと。

GPS端末にはメンテナンスという概念がなく、ふだんから注意していても、機械的トラブルはほぼ防げません。

とつぜん裏切られないようにするためには、なるべく端末は最新機種を購入し、あまり使い古さないことでしょうか。

 

ネットやサーバーのソフトウェア的不具合


頻度は圧倒的に少ないものの、完全にお手上げなのが、ネットワークの裏切り。サーバー的な不調で利用不可になることです。

原因はさまざまですが、機械的な不調と同じく、突然やられたらオシマイです。

おまけに「探偵あるある」で、対象者が動いているときに限って突然起こるのだから、まるでイヤガラセ。

 

以前、連休中の15~22時という時間帯、もっとも普及しているGPSサービスのサーバーがダウンし、検索不可になったことがあります。

全国の、調査中の探偵の阿鼻叫喚が聞こえてきそうでした。

GPS業者にとっても予期せぬトラブルであるため、まず防ぐことはできません。

この裏切りに対する備えは、サーバーの違う別種のGPSを複数設置しておくことしかありませんが、そんなことをする探偵は、ほぼ皆無でしょう。

 

GPS端末自体の性質


不調とまではいかなくても、GPSは固有のクセがあり、それが探偵を困らせることがあります。

細かい問題なので、上げるとキリがないのですが、パッと思いついた限りでは、以下のようなものがあります。

 

電波のズレ

GPS端末は、その名の通り人工衛星からの観測をもとに、位置を特定します。

その精度はきわめて高いですが、それでも50~100メートル、ひどいときは500メートル以上のズレが生じます。

この50~100メートルの誤差。たとえば地方部なんかでは、調査に影響することはほぼありません。

問題は、ビルがひしめき、地下や立体駐車場がある都心部です。たとえば福岡であれば、博多駅周辺天神中央部の調査では、このズレが大きく影響することがあります。

 

また、GPSは段差に弱く、長崎のような込み入った坂の街や、巨大な立体駐車場 (とくにショッピングモール) や、地下駐車場では、位置の特定が困難になる性質があります。

こればかりは仕様なのでしかたありません。

GPS黎明期から調査している私のようなベテラン探偵からすると、「昔の端末はもっとひどかった」という印象で、これでもずいぶんマシになりました。

ざっくり位置を検索し、「今日はイオンに居るな」とか「またパチンコ屋か」とか、対象者の居場所を確認するだけなら、これらの誤差はあまり関係ありません。

 

問題は、知らない誰かの車に乗り換える可能性がある場合。

まさに1・2分以内というシビアさで「対象車両がどこにあるか」発見する必要に迫られます。そんなとき、仕様とはいえ位置検索にズレが生じて、なかなか見つからないと、

「たのむよ、おまえ……! もう!」

とボヤきたくもなります。

 

バッテリー問題

地味にキツいのが、バッテリーに関する裏切り。

シビアな調査が続くと、短期間では終わらず、連日実施することになり、GPSも連続使用することになります。

なかなか結果のでない「シロの調査」ではなおさらです。(浮気のシロは悪魔の証明)

そうなると、GPSがいつまで使用可能かは、きわめて重要な問題となります。

充電・交換というのは、探偵にとっても手間なので、そうそう気軽にできることでもありません。

 

いちおう、GPS端末によっては電池残量の目安を通知してくれるタイプもあります。

が、この通知がまた、非常に、ほんとうに、マジで、アテになりません。

50%残と通知が来たので「あと数日は大丈夫だろう」と安心していたら、次の日の調査中いきなり「残り15%」とか言い出します。

「げえええ」とのけぞって、少しでも節約して使っていたところ、その日の夕方には「電池が切れました」とあっけなく終わったりします。

また、残量通知自体が来ないことも……。

 

経験的に「満充電したら2週間はもつ」というデータがあっても、そのときの状況によっては10日で切れることもあるので、アテにはできません。

むしろ、いつでも裏切られる覚悟が必要です。

テレビのリモコンと違い、行動調査におけるGPSのバッテリー切れは、成否に関わる切実な問題。

なのにバッテリーちゃんは、けっこうかんたんに探偵を裏切ってくれるのです。

 

②発覚リスク

GPSで起こりうる最大の裏切りが、「対象者にバレて、探偵や依頼人にとっての致命的なマイナスになる」というものです。

便利なアイテムGPSも法的にはけっこうグレー。一歩間違えれば、相手から「ストーカーされた!」「精神的苦痛を受けた!」とナンクセをつけられかねません。

そして、GPSという端末は、その格好の物証となります。

そもそも現場において、腕のいい探偵であれば、相手にまったく気づかれず、痕跡も残さないもの。ですが、ことGPSだけは、物理的にゴマカしようがないわけです。

手強い対象者ともなると、発見したGPSを逆手に取って、依頼者サイドを攻撃したり、探偵を特定しようとすらします。

そして、近年はさまざまな理由から、GPSはどんどん発覚しやすくなっているのです。

 

③探偵ビジネスへの悪影響

私が探偵を始めた23年前は、ちょうどGPSが業界に普及し始めたころでした。

それまでは、音と電波によるアナログ追跡装置が主流。それすら高額で、カネのある大手・中堅調査会社しか持ってませんでした。

だから、目立たない車 (カローラなんか) で地道に尾行していた個人探偵は、追跡の概念を覆す秘密兵器の登場に、諸手を挙げて大歓迎しました。

このころのGPSは一般に出回っておらず、探偵だけが独占使用できたのです。

それから10年くらいはGPS調査の黄金時代。一般人に対し、プロとしてのアドバンテージをぞんぶんに発揮できた時期でした。


しかし、あまりに普及しすぎたGPSは、一般利用されるようになり、いまではまったく珍しくありません。

当然、探偵に頼むまでもなく自分で浮気調査が可能になり、探偵へのニーズは激減。我々は、ビジネスモデルの転換を迫られることになったのです。

GPS普及による探偵のニーズ崩壊……これもまた、大きな視点では裏切りと見えなくもありません。

 

以上、ざっと「GPSの探偵への裏切り」について解説しました。

裏切られないためには、慎重な付き合いが必要というのは、人間関係と同じですね。

 

カメラはここぞというとき動作不良を起こす

探偵が使用するカメラには大きく分けて2種類あります。

直接撮影用のカメラと、秘匿撮影用の隠しカメラ。メインウェポンとサブウェポンといった感覚でしょうか。

メインカメラは、探偵からすれば、侍にとっての、兵士にとってのライフル。これなくして調査はありえません。

探偵が使う直接撮影用カメラは、一眼レフ派 (大手の調査員に多い) とビデオ派 (機動力重視の個人に多い) とに分かれますが、共通しているのは、民生品をそのまま使うのがほとんど、ということ。

 

一般のイメージでは、プロの探偵が使うカメラは特別な品と思われているかもしれません。

特別な業者への特注品であったり、特殊な改造が施してあったり……。

でもそんなことはありません。我々プロも、どこででも手に入る市販のカメラを使っています。

これは、ソニーやパナソニックといった、優れた電機メーカーの一流の技術者が設計・販売したモノが、けっきょくは一番信頼感が高いから。

別注なんて現実的ではないですし、妙な改造はバランスを壊し安定感を損ねます。

必要なときに、確実に動作する……これが現場でもっとも必要とされる性能なのです。

(そういう意味では、過酷な戦場で、壊すほうが難しいと言われたカラシニコフのAK47が好まれた気持ちが、よくわかります)

 

しかし、いかに優れた日本メーカーのカメラでも、トラブル・不調がまったく無いわけではありません。

むしろ、もっとも肝心な決定的証拠撮影のときに、突然トラブルが発生することが、本当にごくたまにあるのです。

ツーショットを撮るまさにその瞬間……

なかなかピントが合わなくなる、

電源が落ちる、

電源が入らない、

勝手にリセットされ再起動、

タッチパネルが反応しない、

録画ボタンが反応しない、

AFが機能せず対象者だけがピンボケ……などなど

 

その瞬間が過ぎれば、何事もなかったかのように機能は回復。不具合なんてウソみたいに、コロッと作動するようになります。

コレ、なんなんでしょうね……。

むかし「マーフィーの法則」というものが流行りましたが、きっとそれなりにベテランの同業者ならば、一度は経験あるのでは。

バイアス的に思考するなら、こういう見方もできます。

 

「ものすごく肝心な瞬間には、探偵自身にも焦りや緊張が生じ、それが肉体的な変調 (手の震えや発汗、指先のこわばりなど) として無意識にあらわれ、機械の操作に影響を及ぼす」

 

……もしそうであれば、裏切っているのは道具ではなく、探偵自身となりますね。

どちらにせよ、この裏切りをフォローできるのも探偵自身。

もしものスペアを用意し、メインが不具合を起こしても、速やかにセカンダリーカメラに持ち替える、冷静な対応力がモノを言います。

 

秘匿カメラはタイミング次第でバレる

「秘匿(ひとく)」を辞書でひくと、こういう意味です。

秘匿 = 「密かに隠すこと。 また、秘密として隠しておくこと。」

メインカメラが探偵にとっての刀であり銃であるとしたら、秘匿カメラは切り札であり奥の手。「秘密兵器」というべき存在です。

じっさい、隠し設置カメラには長らく懐疑的だった私も、「これは」というカメラを導入後は、調査の幅も広がり、現場がぐっと楽になりました。

しかし、この秘匿カメラもまた、よーく探偵を裏切ります。以下のような弱点があるからです。

 

・機械的な不調が多い

・バレたら致命的

 

・機械的な不調が多い

秘匿カメラはソニーやパナソニック製ではありません。

海外の一流メーカー、ファーウェイやサムソン、LG製なんかのものもありません。

作っているのは、99%が中国の聞いたこともないようなメーカーです。

性能はユニークで、かつ意外に悪くはないものの、とにかく安定性に欠けます。

探偵の調査、「証拠撮影」という失敗が許されない現場で使用するには、いささか不安定で信頼性に欠けるわけです。

たとえば……

 

・録画スイッチをオンにしていたのに、撮影できていない (録画ファイルが欠損している)

・Wi-Fiが飛ばない (遠隔監視画面がフリーズ)

・電池が予想よりも短時間で切れる (満充電したのに…)

・いつのまにか電源がオフになっている (誰だ!)

 

……このへんが頻発する故障です。

前項で「メインカメラはここぞというとき動作不良を起こす」と書きましたが、頻度で言うなら「ごくごくたまにあるかないか」くらいの話。

やはりソニーやパナソニックといった日本製カメラの安心感はケタ違いです。

いくら秘密兵器の秘匿カメラでも、たびたび裏切られてしまっては、安心して頼れません。

ここぞというとき裏切られて痛い目見ないよう、失敗できないシチュエーションでは、以下の対策が必要となります。

 

・絶対に外せない証拠撮りには使用を避ける

・同様の秘匿カメラを複数台セットする

・安定した動作のモノを選ぶようにし、一度でも不調になったものは廃棄

 

・バレたら致命的

当サイトでも、ことあるごとに私が連呼しているのが、

「秘匿カメラはバレる」 

「バレたら致命的なマイナスになる」

そういう意味では、GPSの裏切り【②発覚リスク】と同様と言えるでしょう。

いくら慎重になろうと、凝った偽装を施そうと、「え。まさかこんなタイミングで!?」と、信じられないバレ方をするのが、秘匿カメラ。

 

たとえば……

・ラブホの壁面に付けたところ、たまたま他の客に見られてしまう

・柱に設置したときに限って、その箇所に工事が入る

・ふだん誰も触れない場所なのに、とつぜん管理人が掃除をおっぱじめる

・子供が見つける

 

「間が悪い」としか言いようがないめぐり合わせで、予期せぬ発覚に見舞われてしまうのが、秘匿カメラの裏切りです。

これを避けるには ……「仕掛けないこと」

それが一番の、というか唯一無二の対策法です。

しかしそうも言っていられないのがプロの探偵業。だとしたら、少なくとも……

 

・秘匿カメラに頼りすぎない。やたらめったら仕掛けない

・仕掛けずに済むなら、それに越したことない

・設置するときは、毎回緊張感をもって、真剣に

・「そうそうバレるものじゃない」などと安易に考えない

・過信しすぎない

 

ガジェットは探偵を裏切り、それでも助ける

道具はさまざまなカタチで人間を裏切ります。

しかし道具を使いこなせないと、プロの探偵とは言えません。

道具に頼りすぎない。道具を過信しない。

かといって裏切りを恐れない。上手に付き合っていく。

そして、いきなり裏切られても、慌てず騒がず冷静に対処する……

この気持ちを持つことが、機械の裏切りで調査失敗することを防ぐ、数少ない手立てと言えるでしょう。

 

 

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