浮気調査と隠しカメラ
先日、緊急で緊急の緊急依頼を引き受けました。
相談電話を受けた45分後には、現場で隠しカメラを設置していました。
なんともムチャな話ですが、証拠撮影のチャンスは、まさしく一瞬。
あとからやり直しはきかず、そのチャンスを取り戻すこともできませんから、とにかく確保することを最優先したわけです。
こんなとき、威力を発揮するのが設置タイプの偽装カメラ。
でも探偵によって、偽装に対する本気度も、偽装そのもののクオリティ・レベルもまったく違います。
カメラの偽装は、本気でやらないとかえってマイナスになる、非常にデリケートなもの。
なのに、その最低限のレベルに達していない残念な業者も、おおぜい居るのです。
今回は……
それぞれについて解説していきましょう。
①カメラの偽装とは
特別な録画カメラを、パッと見それと分からないよう、工作して設置することです。
たとえば浮気調査において、証拠を押さえる一番確実な方法は、探偵自らが張り込んで撮影すること。
ですが、調査の現場はたいへん流動的で、何が起きるか予測つきません。
それをフォローするのが、スペシャルな探偵機材。
そんな、ひみつのスパイグッズの中でも、もっともベーシックな偽装カメラは、以下のようなケースで必要となります。
・張り込みができない
・調査員が現場を離れなければならない
・もしものときの保険
ケース1 張り込みができない
おそらく、もっとも偽装カメラが必要とされる場面でしょう。
我々は張り込みのプロですが、どうやっても張り込めない状況というのも、必ずあります。
そんなときは隠しカメラを上手にセット。
遠隔操作によって現場をモニタリングし、まったく別の場所から監視するわけです。
しかし、中にはこういった偽装カメラを所持していない探偵も居ます。
張り込みの名人であれば、そんなハンデ関係なしに調査が可能ですが、そんな凄腕探偵は、福岡の調査業界においても非常にレア。
大部分は、以下のどちらかです。
・マジメに張り込まず、テキトーな報告でごまかす。
(「動きなし。動きなし。ずーっと動きなし」)
・ムリして張り込んだあげく、管理人や警備員、ご近所に文句を言われる。
(そして最後は警察に不審者通報)
ケース2 探偵がその場を離れなければならない
「探偵は現場から絶対に離れない」
鉄則ですが、そうもいかないシチュエーションがあります。
たとえば、今回の緊急依頼の私がそう。
依頼人と契約書をかわすため、一度現場を離れなくてはなりませんでした。
(法律的には意志表示だけで契約は成立しますが、【探偵業法】というマジメにやっている探偵にとっては邪魔でしかない規制法のおかげで、事前にかわさねばならない書類が多々あるのです)
そのほかにも……
などなど……
いくらでも思いつきますが、とにかく、不可抗力で現場から離れなくてはならないとき、自分の代わりに、機械の目で張り込んでもらう必要が生じるわけです。
ケース3 もしものときの保険
上記のようなトラブルは、調査序盤においては発生せず、問題なく進められそうかな、と安心した矢先、イヤガラセのように起こります。
いざそういう状況になって、偽装カメラを仕掛けようと思っても、すでに手遅れなことがほとんど。
(それでも無理して付けようとすると、この後解説する「偽装カメラバレ」を引き起こします)
だから熟練の探偵は、まだ時間的余裕があるうちに、
を想定。あらかじめ、保険として偽装カメラを設置しておくのです。
ちなみに、この「保険をかける」という行為にも、探偵それぞれのレベルが現れます。
気の利かない探偵、想像力がない探偵、まだ突発的事態を味わうほど業務を経験していない新人は、事前に保険をかけることまで気が回りません。
そして、一瞬の証拠撮影のチャンスを逃し、
「よ、予想もしなかったことが起き、現場に居られず、撮影できませんでした……」
と言いわけするのです。
(正直に言うならまだマシ。テキトーにウソついてごまかそうとする探偵も多いです)
②SNSで見る、シロウト探偵の偽装カメラ
偽装カメラは本気で付けろ!
それが私の考えです。下手くそな偽装は、下手くそな変装と同じで、やっても無意味どころか、かえってマイナス。
どうして私がこんなことを言うのか。
こともあろうに、現役探偵が、SNSで自分の設置した偽装カメラをドヤ顔でアップップ。
それだけでもどうかと思うのに、しかもそれが、シロウト同然の低クオリティだったからです。
それも、全国各地で、けっこうな数の探偵が。
とくに多いのが、市販のホームカメラに、黒の塗料を塗りたくっただけのモノ。
それを無造作に、壁や、看板や、自販機の上や、交通標識の鉄柱や、ラブホの敷地内の隅にポンと設置している写真です。
よく見てみろ。そしてよく考えてみろ。メチャメチャ怪しいっつーの。
黒という色は、夜間以外、じつはけっこう目立ちます。
(探偵業界では、やたらと黒を多用する、安直な傾向があります)
ただでさえ、市販のWi-Fiカメラは存在感のある色と形状。
(キューブ型のATOM2はまだマシですが、それでも意識すればすぐ目に付きます)
シロウトじゃあるまいし、そんなホームセキュリティカメラを黒く塗っただけのシロモノを、無造作にポンと置かないでください……。
当サイトでも「ATOM2を偽装シールで目立たなくしよう」という記事がありますが、これはあくまで、依頼人さまの私物を、私がサービスで目立たぬよう加工しただけ。
自分の調査ではいっさい使いません。もっとプロ仕様の、完全に擬態したカメラを使用します。
③カメラがバレたらどうなるのか。警察に逮捕されるのか
エラそうに語る私も、じつは開業したばかりのころ、安易に設置した隠しカメラがバレてしまい、警察に通報されたことがあります。
それ以降、本気(マジ)でカメラの隠ぺいに取り組んでいるため、今のところ一度もバレたことはありません。
でもこういうのは、バレてからじゃ手遅れ。
逮捕されるか否かとなると、なおさらです。
そこで、何人かの弁護士に事前に相談してみました。すると、一様にこういう答えでした。
「完全に個人の敷地に入ったり、設置するにあたって建造物その他に手を加えなければ、犯罪には該当しないと思う」
また、じっさいに隠しカメラがバレた探偵を知っているという弁護士は、こうも言っていました。
「警察は、公共の場と言える場所に仕掛けられた探偵の隠しカメラに関しては、比較的寛容っぽい」
その探偵は、ラブホテルにカメラを仕掛け、他の客にバレて警察を呼ばれたらしいですが、お説教で済んだということです。
(調査そのものは大失敗ですから、安易に考えるべきではありません)
結論:隠しカメラがバレても、状況が悪質でなければ、それほどオトガメはない。(ただし、調査そのものはほぼ失敗する)
寛容なんてものは、「スピード違反で制限速度のプラス10キロくらいなら見逃される」……みたいにアヤフヤで不確かなもの。
なんの保証もありませんから、やはり甘く考えるべきではなく、以下の④のような結論に至るのです。
④偽装カメラは本気で付けろ!
弊所ホームページで私が何度も言っているように、どんなに完璧なカモフラを施しても、偽装カメラは設置する限り、発見されるリスクが顕在します。
(付けさえしなければ、リスクはゼロ)
付けないで調査が可能なら、そうすべきという考えに変わりはありません。
しかし、リスクは総合的に計算するもの。
偽装カメラが見つかるリスクより、無理な張り込みがバレるリスク、証拠撮影が失敗するリスクのほうが大きいのであれば、ためらいなく使用すべきです。
【発覚リスク < 調査失敗リスク → 偽装カメラを使用すべき】
そしてこの発覚のリスクは、探偵自身の経験とセンス、
姿勢によって、大きくコントロールできる部分でもあるのです。その手間や労力を惜しみ、あるいは思考停止させて、偽装カメラをテキトーに付ける行為は、探偵業をナメているとしか思えません。
なにより、現場や依頼人、必死でリスクをコントロールしている同業者を、あまりに軽視しています。
ですが、真剣に付けなければ、おそろしく簡単に、容易に、イージーにバレます。
SNSで見る限り、おそらく全国各地で、少なくない探偵・調査員が、工夫なしに付けた偽装カメラを発見・通報されているはず。
それがあまり問題になっていないのは……
……これが理由でしょう。
じつは、もり探偵事務所は、特別な業者から専用の機材を仕入れています。
そのような会社とコネがなく、ネットの市販品やホームカメラを使わざるを得ないとしても……
偽装について真剣に考え、知恵を絞り、様々なリスクを想定し、自分ができないなら優秀な人間に教えを請うようにしつつ、隠しカメラとは本気で向き合うべき……
そう、私は思います。
(隠しカメラを使いこなせない探偵ばかりだからこそ、もり探偵事務所の強みにもなるわけですが……)
探偵からの挑戦状
最後に、私が本気で設置した隠しカメラをひとつご紹介しましょう。(じっさいの、リアルな現場です)
下の写真の中に一つだけ偽装カメラがあります。どこに付いているか、あなたには分かりますか? (難度レベル・中)