調査現場における理想の人数は?

面談のとき、よく聞かれるのが「もり探偵事務所は、何人で調査しているんですか?」

ウチは個人探偵事務所です。

大手の調査会社ほど、たくさんの調査員が在籍しているわけではありません。

それで、不安なって「ここ本当に大丈夫? ちゃんと結果を出せるのかな?」と、こんな質問をしてくるのだと思っていました。

しかし、どうやら違うようです。

「調査員をたくさん使う = 人件費が高くつき、調査料金も高額になる」

……そっちに不安を覚えた方が、「何人で調査するの?」と確認するのだと、最近わかりました。

くわしく聞いたところ、別の調査会社で見積もりをとったら、目玉が飛び出る金額(ウチの軽く三倍)を提示され、その理由が

「調査員六名、車両三台で調査するから!」

……だったらしいのです。

 

高額の調査会社のカラクリ

その見積もりが正当だったかはわかりません。(まあ、高く請求するための口実でしょう)

たしかに「この現場は大変難しく、調査員やクルマをたくさん用意する必要がある」と言われてしまっては、依頼人も納得せざるを得ない場合もあります。

ケチッて結果が出なかったら、元も子もないからです。

しかし探偵は、人件費や機材費がすべて税金でまかなわれる公的組織ではありません。

民間のサービスである以上、最低限の人員と機材で、最大限の結果を出すようにするのが、経営努力というものでしょう。

そもそも、通常の行動調査に、六名も必要ないというのが私の意見です。

かえってジャマです。

だいたい、腕のいい探偵であれば、一人でだって、ある程度の成果は出せるもの。

(じっさい私も、開業後しばらくの間は、単独で調査していました)

殺人事件の一大捜査網ならともかく、浮気調査で五人も六人も必要だなんて、どれだけ効率が悪いんだ、と思います。

 

探偵もりの考える、理想の調査態勢は「二人」

あくまで私の個人的見解ですが、探偵事務所における理想的な調査チームは、ベストから数えて……

【二名 ← 一名 ← 三名 ← 四名】

という順番です。五名や六名は、大企業の役員や芸能人にでも張り付くのでなければ論外です。

それぞれについて説明しましょう。

 

三名・四名態勢の弱点

まず、「三名」と「四名」がどうして「一名・二名」より下なのか。

それなりの規模の調査会社や興信所であれば、この【三名~四名態勢】というのは、珍しくありません。

そんな会社で働く調査員からすれば、

「プロの調査会社を名乗るなら、最低でも三人は居てあたりまえ」と言うかもしれません。

たしかに三名や四名、とくに『二人一組で2チームという四名態勢』は、たいへん調査がしやすいです。それは否定しません。

二名がベストと結論づけましたが、それは「トータルバランス」の話であって、単純に調査効率だけを見るなら、三~四名がベストだと私も思います。

しかし、三・四名にはの最大の欠点があります。【人件費】です。

 

依頼人からは見えない 水面下の人件費

探偵がいくら給料をもらっているのか。依頼人ならずとも興味があると思います。

どこの調査員も給料の話題になると口が重いですが、私がこれまで聞けた範囲では、「15万円~40万円」といったところ。

40もらっているのは相当恵まれた調査員で、50もらっているという話は聞いたことがありません。

とりあえず、中央値を『30万』としてみます。

三名の調査員を常駐させると、人件費だけで90万超

四名だと120万超

(もちろん人件費はそれだけで済みませんよ)

三~四名の調査員を抱える探偵事務所は、ひどくお金がかかることになります。

そして、そのコストはどこに影響するか。

依頼人さまです。依頼人さまが支払う、高額な調査料金が人件費になるのです。

 

一名態勢という選択

代表者一名だけという探偵事務所は、開業したての新人に多い形態ですが、実は意外に多いです。

「一人でやっています」とわかるとナメられるので、事務所名を大仰にしたり、立派なHPを作ったり、SNSで複数の人員を匂わせたりして、涙ぐましく工夫しています。

とはいえ、その一番のメリットは、固定費がかからないこと。

経営も営業も調査もすべて自分一人でやる事務所であれば、調査員三名の事務所(+代表者・営業員の合計五名と仮定)の、約【5分の1】の固定費しかかかりません。

調査員が三名居る調査会社が存続するのに必要な売上が『月300万』だとすると、その5分の1ですから、『60万』でいいということになります。(雑な計算で恐縮ですが)

 

調査会社Aの 存続費用問題

浮気調査の料金の平均値を、『一件50万円』と仮定してみます。

調査員四名の会社 ……A (固定費300万)

調査員一名の事務所……B (固定費60万)

Aは月に六件の依頼を取らなければ、潰れてしまう計算になります。

しかし、浮気調査のニーズなど、じつはそれほどあるわけではありません。

現実には、月に二・三件しか仕事がないときだってあるでしょう。

調査会社Aは、依頼が三件しかないとピンチです。

そうなると、なんとか客単価のほうを上げなくてはなくてはなりません。(50万→100万)

そんなとき「うちは三名の調査員を食わせないといけないので、依頼料100万円かかります」なんて言えません。

「うちは一人でやっているショボい事務所と違って、三名態勢ですから、調査力が段違いです!」と言うはずです。

 

なんでも一人でやる 探偵Bの苦悩

その点、Bなら月に一・二件(50~100万の売上)でも存続していけます。

しかし、一人きりで探偵業をこなすのは、おそろしく大変です。

普通レベルの探偵には難しいでしょう。

突出したセンスや責任感、経験、能力をもった【特別な探偵】であることが求められます。

そんな探偵はきわめてレア。

だから、ひとり親方の探偵事務所は、それほどレベルが高くはありません。

三名態勢の調査会社の言う「調査力は段違い」というのも、あながち間違ってはいません。

 

調査現場の計算式は『1+1=3』

私自身、単独で現場をこなしてきた経験から言うなら、一人でやれることには限界があります。

交代ができませんから、トイレや食事、睡眠などの問題に直面します(我々はロボットではありません)。

二箇所以上の出入口を完璧にカバーするのも困難です。

運転・撮影・記録など、様々な作業において、負担も大きいです。

その点、二人はあらゆる面で一人を上回ります。

手分けできる。協力できる。分業できる。交代できる……

作業効率という点において、一人とはまったく比べ物になりません。

調査の現場においては、熟練の調査員がバディで動くことほど、強力なチームはないのです。

一人よりは絶対に二人。(金銭的なコストを度外視するなら)二人よりは三人、四人。

そして、

「『調査員二人態勢』が、人件費・コスト・料金の面で、もっともバランスがいい」というのが、私の結論です。

 

まとめ

今回記したのは、あくまで私の個人的見解です。

三・四名態勢でも、顧客満足をクリアしつつ、維持できている調査会社もあるでしょう。

依頼人を食い物にせず、多数の調査員を維持できていれば、そこの経営は間違いではありません。

しかし、長年業界を見てきた私の考えを率直に記すなら……

二名態勢で、代表者が調査もこなせるところが、もっともバランスがいい探偵事務所です。(つまり、もり探偵事務所です)

一人でやれている、最低限の力をもった探偵が、その次。

三名態勢で、常識的な金額の調査会社がその次。(三名なのに見積もりが安すぎるときは要注意。必ず追加請求があります)

 

【二名 ← 一名 ← 三名 ← 四名】

これが、私の経験から見た、現実的かつ効率的な調査態勢の順序です。