ドローン

ハイテク調査と探偵:ドローン編

テクノロジーの進歩はミリタリーと切り離せません。

調査機器としておなじみの、暗視装置も、GPSも、元は軍事利用のために開発されたものです。

今となっては社会に不可欠なコンピュータも、そもそもは、核兵器開発のために進歩したという説もあります。

とはいえ、ミリタリーは負の面ばかりではありません。

軍事目的だったハイテクノロジーも、やがて、民間人にもたらされ、生活を便利なものへ変えてくれるからです。

探偵もまた、その恩恵を少なからず受ける存在のひとつです。

今回はその話。

 

ドローンを使った探偵

元々軍事用として開発され、民生品として急速に浸透しているもの。それがドローンです。

これまでも、リモコン操作によるフライトマシーンはありました。

しかし、いわゆる「ラジコンヘリ」と違い、ドローンは「非常に安定したホバリング性能」「自動操縦」「障害物検知」といった能力を備えます。

複数の羽根で姿勢を制御するため、騒音やブレの少ないため、精密飛行が可能なのです。

 

このドローンの撮影能力に目を付けたのが、カメラマンと探偵です。

じっさい、ドローンが登場して以来、かつてない迫力ある俯瞰撮影が可能になりました。

花火の中、樹海、険しい山岳地帯、原生林、危険なサバンナなど……

その斬新な映像はすっかりおなじみです。

 

そして我々探偵もまた、撮影を日常的とする稼業。

ドローンを「新しい証拠撮影機器」として考える調査員も少なくありませんでした。

 

ドローンを使った行動調査は可能か?

全国に数多くある探偵事務所、興信所の中には、ドローン調査を大々的にアピールしているところがあるかもしれません。

地元・福岡の探偵事務所、調査会社、興信所では、あまりそういった話は聞きません。

そして、「もり探偵事務所」では、ドローンの調査利用は、まったくしていません。

現時点で、探偵用ドローンは時期尚早というのが私の判断だからです。

 

ドローンを使った調査の問題点1

ドローンを浮気調査や行動調査で使うのが難しい点は、いくつもあります。

どんな道具もメリットとデメリットは存在します。

デメリットをメリットが上回れば、採用の余地もあるのかもしれません。

(ドローンの利用を大々的に謳っている探偵事務所は、メリットだけを宣伝していると思われます)

 

しかし、探偵の調査では、「ハイリスク・ハイリターン」も「ミドルリスク・ハイリターン」も避けるべき。

いかにリスクを減らすかが最重要……というのが、二十年近く(2023年時点では23年)探偵を続けている私の、変わることのない原則です。

 

まず、ドローンが調査利用に向かない点は、航続可能時間の短さ……つまり電池のもち。

あまり知られていませんが、ドローンの航続時間はかなり短いです。

「一時間」もつ機体は民間用ではまずありません。三十分もてばいいほうです。(注・2023年時点ではかなり改善されています)

 

これは「大容量バッテリー = 大きくて重い」という飛行機械の、宿命的なアンビバレンツに起因します。

空を飛ぶ乗り物は重力に逆らわなければならず、軽さこそ最重要課題。

飛行機やジェットヘリは、燃料効率の高いジェット燃料を利用しますが、ホバリングを前提とした民生用無線機では、液体燃料は使えません。

どうしても電池を使わざるを得ません。そして、あまり重たい電池を搭載すると重力が発生しますから、結果として、長時間飛べないというムジュンが起こります。

 

探偵の仕事は、基本的に長時間を前提としています。

だから、三十分程度しかもたない機械は、調査には不向きなのです。

 

ドローンを使った調査の問題点2

次に「目立つ」という問題点。

探偵にとって、これは致命的です。

いくら静音性が高く小型で目立たないといっても、ドローンが目の前を飛んでいれば、さすがに目立ちます。

特に人間の目は、空中で静止している物体を異常に感知しますから、鮮明に人物が映る距離まで接近したら、一発でバレるでしょう。

 

それ以前に、ドローンは、「人口密集地で使用不可」「第三者の至近(三十メートル以内)に接近しちゃダメ」と決められています。

もし探偵・調査業者が「ドローンを使って浮気証拠撮ります!」と明言していたら、すでに法に抵触していることになります。

 

ドローンを使った調査の問題点3

撮影が難しいのであれば、「空中尾行」という使い方はどうか?

でも、それも今のところは現実的ではありません。

 

自動車を追跡するには市販のドローンは性能不足です。

では徒歩の対象者の尾行はどうか。

いくら静音性が高いとはいえ、近くで聞けば虫の羽音を十倍にしたような「ブーーーン」という音がして、すぐわかります。

立ち入れない場所や死角の確認はどうか?

これこそドローンの真骨頂。ですが、規制の一つに「操縦者が目視できない場所は飛ばせない」という決まりがあるのです。

また「第三者から三十メートル離れるという規制」は、建物や自動車にも適用されますから、「建物のぞき見」にも使えません。

 

現時点でドローンが調査目的に使えない理由。それは、性能面だけでなく、この幾重にもかけられた法規制が原因です。

 

ドローンを使った調査の問題点4

いくつか問題点を列挙しましたが、ドローンが調査に使えない最大の理由を記して今回の記事を締めます。

 

少しずつドローンは浸透してきていますが、それでもまだまだレアなホビーです。

町中を見てみても、誰かがドローンを飛ばしていたら目につくのが現実。

調査目的で使っていたら、すぐ相手にバレ、とても警戒されるのは必至。

……これが最大の問題点です。

 

ふと見上げたら、「ブーン」とうなりを上げて、巨大な虫のような物体が浮遊し、無言で自分を監視している……

もはや「恐怖」と言っていいでしょう。浮気どころじゃありません。

 

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